第1章 ぼくを困らせる可愛い主 〔にっかり青江/R18〕
「やだ、触らないで」
璃杏はずるずると後ろへ逃げるが、幽霊はふよふよと追い掛ける。
こいつは色狂いの幽霊だったか、とぼくはようやく気付く。
普段、柳の木のあたりは璃杏はあまり利用することがないから、この幽霊自体も何でそこにいるのか自分でも目的がわからなかったのだろう。
それが目の前におんなである審神者を見て、おんなに触れたいという目的を思い出し、璃杏に手を出そうとしている。
全く困ったものだ、ぼくの逸話を璃杏の目の前で披露することになるなんて。
ぼくは気を集中させると内番服から戦闘服へと衣装を替え、自身の大脇差を確かめる。
「それ以上、主に近寄らないでくれるかな」
ぼくが幽霊に近寄ると、幽霊はぼくの姿が替わったことに一瞬目を見開き、それでも気味の悪い笑みは消さなかった。
「ふへへ…その刀で自分を斬るんですか?幽霊を斬る刀なんて聞いた事が無いですよ」
幽霊は璃杏へずいと近寄る。
「ねぇ、自分と良いことしましょうよ」
璃杏は泣きそうな表情になってこちらを見て、ぼくの姿が戦闘服になったことにようやく気付いた。
「…青江さん…」
助けてと言わんばかりの状況にぼくは主へ微笑む。
「主、大丈夫だよ。ぼくに任せて」