第1章 ぼくを困らせる可愛い主 〔にっかり青江/R18〕
ぼくはそして、璃杏に今すぐのしかかりそうな幽霊に話し掛ける。
「ねぇ、きみ。彼女から少し離れてもらっても良いかい?彼女とても怯えているだろう?」
幽霊は璃杏をまじまじと見て、涙を浮かべた表情に怖がらせていると気付く。
「自分が怖い?」
璃杏に聞いた幽霊は、その問いにこくこく頷く璃杏を見て少し離れた。
「良いことするだけなのに、怖がらないでよ」
少しでも離れてくれれば十分。
ぼくは一歩踏み込むと同時に抜刀し、幽霊を袈裟掛けに後ろから斬った。
ざしゅっと空気を斬り付ける音がし、幽霊がこちらを振り向く間もなく消え、ぼくの前には色狂い幽霊に怯える璃杏の姿だけが見え、そして彼女はぼくが幽霊を斬ったことに驚いた様子を見せていた。
「…青江さん…今のは…」
「今のって?」
言いながら抜いた刀を鞘へ戻す。
「もしかして…幽霊を…斬った…?」
驚きつつ言う璃杏へぼくは答える。
「そうだよ、きみは知りたがっていただろう?ぼくが幽霊を本当に斬ったことがあるのかって。今のでわかったんじゃないかな」
ぼくはまた気を集中させ、戦闘服から内番服へと姿を変えて璃杏へ近寄った。
「すぐ祓ってもらえば良かったね、怖い思いをさせて悪かったよ」