第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「璃杏さん、次の対戦が始まるよ」
乱に言われ審神者ははっとして顔を正面に向けると、スクリーンの中で始まった対戦をきゅっと唇を結んで見つめた。
二戦目は引き分けに終わり、気が付くと先程座るところを教えてくれた審神者のテーブルが空になっており、スクリーンを見るとその審神者の部隊が三戦目の出場者として表示されていた。
「さ、三戦目が始まるからこっちも移動しよう」
審神者は立ち上がり、歌仙たちも静かに立つとそっと他のテーブルに邪魔にならないように外へ出て隣の間へ移動した。
すると対戦の間をはさんで反対側の部屋にいた部隊が一緒に部屋に入り、どうやら審神者の本丸の対戦相手らしいと審神者たちは気付く。
相手側も気付き、先頭にいた審神者が娘に話し掛ける。
「四戦目の本丸のかたですか?今日はよろしくお願いします」
審神者も急いで頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします。今日が初めての演練なので、わからないことがあったら教えてください」
審神者の言葉に相手はおや、という表情を見せる。
「あぁ、初めてですか、それは不安なことが多いですね。この演練は一見男士たちが怪我をしてしまうようにみえますが、あくまでバーチャルの世界での戦闘なので、終わると怪我は消えてなんともない今の姿で戻ってきますよ」
「え、そうなんですか?」
驚く審神者の様子を見て、相手は表情を和らげて微笑む。