第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
乱は目を輝かせると台所へと受け取った箱を運んで行き、入れ違いに歌仙が顔を出した。
「あぁ、璃杏さん、おかえり。もうすぐ夕餉が出来るよ」
「ありがとう、歌仙さん。すぐに着替えてくるね」
審神者部屋へ行った娘―彼女は実は刀剣男士を統べる立場の審神者であるーは手早く着替えて広間へ行くと、既に全振り揃って娘を待っていた。
「お待たせ。食べようか」
審神者が声を掛けて座ると全員で挨拶をして食べ始め、食後に審神者の買ってきた菓子を口にしながらあれこれ話し出す。
「この本丸が出来て3か月だけど、私が鍛刀したのって初期刀の歌仙さんを除いた5振りだけだけど、この数って少ないのかな」
審神者は新任審神者で本丸を開いてまだ3か月程だった。
そして審神者が鍛刀したのは、初期刀の歌仙を除いてまだ5振りという少なさだった。
「まぁ、鍛刀を集中してやる審神者もいるけれど、きみみたいにゆっくり鍛刀する審神者もいるから、多い少ないは気にしなくていいよ」
歌仙が湯呑を持って品良く茶を飲むのを見ながら、審神者は本丸にいる6振りを順に見る。
「歌仙さんは初期刀で、乱ちゃんは私が初めて鍛刀した刀。それから…あっ!」
思い出したように審神者が声を上げたので、みなが彼女を見る。
「どうしたの、璃杏さん?」
乱が問うと、審神者は「そうだ」と話しを変えた。
「あのね、今日、現代遠征に来ていたのか、他の本丸の刀に会ったよ」