第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
『いつか私の本丸からも、ああいう風に男士たちが遠征に行くのかなぁ』
肥前は飛びあがった先の屋上から、そんな事を思う娘に気付く。
『他のニンゲンは気付かなかったのに、何故あの娘だけ俺の姿に気付いたのか…』
少しまゆをひそめて下を見る肥前に気付いた愛染が話し掛ける。
「肥前、何見てるんだ?」
「…いや、この時代の一般人は平和だな」
紛らわせるように答えた肥前に、愛染は「そうだな」とにかっと笑って答え、すぐその笑みを消して上を見上げる。
「呑気にヒトを見る場合じゃないみたいだぜ」
と肥前に話し掛け、肥前は何も言わず小さくうなづいた。
そしてそこに集まった六振りの刀剣男士は鞘に左手を添えると、抜刀の準備をして空から時間遡行軍が降りてきたところを倒すべく構えた。
「ただいま」
その娘はカラリと日本の和風玄関の横開きの扉をスライドさせ、帰宅した事を告げる。
「おかえりなさーい」
奥からぱたぱたと走ってきたのは短刀の乱藤四郎。
「璃杏さん、今日はいつもより遅かったね」
美少女と言ってもおかしくない姿の内番姿の乱に、璃杏さんと呼ばれた娘は箱を渡す。
「おみやげ買ってたんだ。ごはんの後でみんなで食べよう」
「わーい、ありがとう」