第1章 ぼくを困らせる可愛い主 〔にっかり青江/R18〕
「ああ、それは主が喜ぶだろう」
三日月が鷹揚に言い、小狐丸も同意したので、乱は「玄関から回ってくるね」と履物を取りに去って行った。
可憐な花は主のようだね。
ぼくはそう思いつつ、三日月と小狐丸のところを去り、廊下をすたすたと歩いた。
ふと立ち止まり外を見ると、廊下から見える柳の木にぼくたちと同じヒトではないものがいる。
ぼくはそのヒトではないものに問う。
「やぁ、きみは何故ここにいるんだい?」
幽霊は答える。
「何故…自分はここにいるのか…わからない」
何故ここにいるのかわからないとはやっかいだな、とぼくは内心声を掛けた事がいけなかったと気付く。
ぼくが話し掛けてしまった事で柳の木の側から離れた幽霊は、ぼくの側でふよふよと浮かぶ。
「自分を見付けてくれた貴方に付いていきます」
「いや、間に合ってるよ」
付いてこなくていいと断ったけれど幽霊はぼくにくっつき、ぼくに元からくっついているおんな幽霊に話し掛けていた。
「やぁ、お仲間かい?よろしく。きみ、美人だね」
綺麗と言われたせいか、おんな幽霊は嬉しそうににっこり幽霊に微笑んだ。