第4章 好き、だから。 〔燭台切光忠/R18〕
「あんまり上手ではないけれど、一応皮を剥くくらいなら…」
答えた言葉に頷いた燭台切は「じゃあ見せてもらおうかな」と言い、審神者は用意されたまな板の前で洗ったじゃがいもとにんじんの皮を剥き始めた。
ゆっくりながらも何とか剥いている姿に、燭台切も審神者の隣で手際良く皮を剥きだし、その早さに審神者は目を丸くした。
「は…早いですね…燭台切さん」
「ん?そうかな?まぁほとんど毎日やっているからね」
声を掛けられ手を止めた燭台切は、審神者に美しい笑みを見せ、その笑顔を目の前で見た審神者は『その笑顔が素敵すぎる…』と内心叫ぶ。
「主も毎日やればもっと早くなるよ」と言われ、審神者は「出来るようになるかなぁ…」と自信なさそうにつぶやいた。
その後も丁寧にひとつずつやりかたを教えてもらいながら夕飯が出来上がり、燭台切が「手伝ってくれてありがとう。きっとみんなも主が作ったとわかったら喜ぶよ」と言い、審神者は大皿に盛り付けながら「そうだといいなぁ」と小さく笑いながら答えた。
その夜の食卓は、審神者が調理を手伝ったというのが話題にあがりにぎやかだった。
「主が料理なんて明日は雨が降るなぁ」なんて茶化されたりしたものの、燭台切が教えただけあって味には全く問題無く、粟田口の短刀たちから「美味しいです、主さま」と言われ、審神者も嬉しそうに箸を進めていた。
食事の片付けが終わり、審神者は厨の最後の片付けをする燭台切に声を掛けた。
「燭台切さん、忙しいのに今日はありがとうございました」
燭台切の前で頭を下げて礼を述べる審神者を見て、燭台切は「いつでもまた声を掛けてね」とにこりとする。
「あ」とその後、すぐ何かを思い出したように燭台切が声をあげる。