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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第5章 梵天の華Ⅰ







「ッあ゙〜〜…何分経ったァ?」
「………〜ッ、…4時間だよクソ野郎…」



眠っていたらしい竜胆はオレの声で目が覚めたようで、手のひらで目をこすりながら欠伸をした。
ソファーに身を沈めた後、知らぬうちにかなりの時間が経っていたらしい。
記憶が全く無い。



「…!?マイキーがいねぇッ」



ぼんやりとしていた視界がハッキリとしてきて部屋を見渡せば、マイキーがいないことに気づいて勢いよく体を起こす。

ついさっき(とは言っても4時間前)まで幹部がほぼ揃っていたはずなのに。
ソファーにいるオレと、毛布を折りたたんで枕にしてタオルをかけ、並んで眠っていた灰谷兄弟しか残っていない。
ゆっくり起き上がる竜胆の腰に抱きついたままの蘭は、身動ぎするもののまだ起きない。



「たい焼き2個食って寝たから鶴蝶が連れてった」
「…いつ」
「オマエがトんでる時に決まってンだろバァカ」



ほんと面倒くせぇよなオマエ…と言いながらまた欠伸をする竜胆。
それに返すことなく、ふとトぶ前のことを思い出した。



「…あの女は」
「知らね。まだ寝てんじゃねーの」
「強制的に起こしゃいいのによォ…」



ここへ戻ってきてすぐ、九井が隣の応接室のソファーに女を寝かせ、投与されすぎたクスリの効能を緩和するために点滴の針を腕にぶっ刺していた。

まァ、4時間ぶっ通しでできる点滴はねぇから、定期的に見に来ているはず…だが。
ソープランドで一度起きたンなら、そろそろ目ぇ覚ましてもいいんじゃねーの?
どんだけ寝るンだよあの女。



「だりぃ…はァ?つか蘭起き、」
「しッ」



起きねぇの、と言おうとして、被せるように竜胆が遮る。
応接室に視線を向けて、閉まりきったドアを見つめる竜胆は、音もなく立ち上がった。



「起きたか」
「…カモな」



小声でやり取りをし、微かに応接室から聞こえる物音に耳をすます。
忍び足で竜胆はドアに近づき、開いた時にすぐ捕まえられるようドア脇の壁へ身を寄せた。

オレは一応、銃を手にしておく。
マイキーには傷をつけるなと命令されているが、やむを得ない場合は足を撃つつもりだ。



「「……」」



おそるおそる、といった風にカチャ…とドアノブが下がる。
キィ…と嫌に響く音を立ててゆっくり開かれたドアの向こうに、暗闇に浮かぶ白く細い手が見えた。

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