第5章 梵天の華Ⅰ
「おっぱい柔らか♡」と何やら機嫌のいい蘭にタオルを巻かれ抱き上げられた女は、一度も意識が戻ることなく車へ運び込まれた。
しかし、あまりにも汚れた体で梵天の基地へ連れていくのは気が引けて、梵天の支配下にあるソープランドへ連れていこうと意見が出たため、車に乗ったオレとマイキー、灰谷兄弟はそこへ向かった。
べつに、下心の無さそうな誰かに頼んでも良かったんだが、…さすがに意識のない女の体を勝手に洗うのは…と意見が出たための最終結果がソープランドだ。
正直ダリィ。
あそこ行くと絡まれて面倒くせぇんだよなァ。
まァ女二人くらい呼んで洗わせりゃそれでいいだろ。
「きゃあッ梵天の皆さんっ!」
「いらっしゃいませぇ〜!」
「三途さぁんお風呂入っていきますぅ?」
「蘭さんはぁ?わたしと遊んでください〜」
「竜胆さんこの前の続きしましょぉ〜!」
深夜、閉店後の店に堂々と入ったオレたち(マイキーは車から降りずに先に帰った)は、仕事を終え帰る準備をしはじめていた嬢たちに案の定囲まれた。
色目を使い、露出の多い服を身にまとった体を擦り寄せようとする嬢たちに「客はオレらじゃねぇ、こいつだ」と親指を蘭の方に向ける。
オレの一言に、キャッキャと騒いでいた声をぴたりと止めた嬢たちの視線の先には、蘭の腕の中にいる蕪谷組の愛娘。
素早く蘭の元へ移動した嬢はその女を見つめ、憐れむように眉を寄せて口々に言いはじめた。
「きゃあ!だぁれその子〜!」
「え〜細っ、ポキッと折れちゃいそ〜…」
「大丈夫?死んでない?」
「うるせぇ。ナンバー1と2、準備しろ」
「きゃ〜ご指名いただいちゃったぁ!」
「こいつが客だ。丁重に扱いやがれ、首領命令だ!擦り傷でもつけようもんならオマエらはスクラップだかンなッ!?」
「「はぁい!喜んで♡」」
「…チッ、あと下着と服も用意しろォ?全裸で連れて帰りたくねぇから」
梵天の幹部相手にここまで騒げる嬢たちは、肝が据わってンのか、ただのバカなのか。
どっちにしろ接客に関してこの店は最高レベルの嬢たちが勢揃いしている。
オレも忠告したことだし、あの女に手を出すことはしないはずだ。
「お預かりしまぁす♡」
「蘭さんも一緒に入りますぅ?」
「え〜?ど〜しよっかなぁ」
「どうしよっかなじゃねぇよ兄貴、遊びに来たわけじゃないんだから」