第4章 じゃあ、オレのになって《三ツ谷隆》●
「わ、たしは、…別行動で飲み直そうかな〜って思って、る」
ごめんよ心の友、私には無理だ!!
ちょっと積極的な私は高校卒業と同時に置いてきたよ!!
意気地無しでごめん!だからこの恋もここで終わらせる!!
…なーんて思ったのに。
「まじ?あー…どうすっかな。…オレも一緒していい?」
「えっ?」
ナ ン ダ ッ テ ?
「あーいや、無理だったら別に、」
「いいいいっい、いい、よ、大丈夫!!」
「ふは、すげぇ吃ってんじゃん」
あまりにも軽快に爆弾を落とすものだから、一瞬だけ三ツ谷くんが何を言ってるのか理解できなかった。
首の後ろを擦りながら照れくさそうに笑って諦めようとした三ツ谷くんに、慌てて肯定する。
せっかくの機会をみすみす逃すわけにはいかない。
「…や、逆に三ツ谷くんはいいのかなー、って…」
「あー、…まあ、まだ飲み足りねぇのもあるし…かと言って大人数で飲むのは、って感じでさ」
「ふふ、確かに大人数はちょっとね」
同窓会に参加している大半の人はきっと、二次会にも参加するはず。
三次会となると、さすがにかなり人数は減るけど…
人数が多いまま参加すれば、酔った人に絡まれやすくなるし…そういうのも面倒に感じてしまうし。
それに、三ツ谷くんと…ふ、二人で?飲みに行けるなら?本望かなぁ〜!…なんて。
「なぁ!三ツ谷いくー?」
「いや、オレ行かねぇ」
「は、三ツ谷いかねーの!?まじ!?」
「ええ〜!三ツ谷くん行かないの〜!?」
「ん。別行動な」
「じゃああたしも行かな〜い!」
「ねぇ三ツ谷くん、二次会行かないなら〜どっか別のとこで一緒に飲み直そ〜?」
「いや、わりぃけど先約あっから」
「「「えっ?」」」
懐かしい顔ぶれが近づいてきたかと思えば、三ツ谷くんを中心にすぐに囲まれてしまい…。
主に女性の皆さんから悲鳴があがる。
「えー、蕪谷さんは?行くよな?」
「あ、えと、ごめん、私もパスで」
「ウソん!?」
「蕪谷さん行かねーの!?」
「あ゙〜俺らのマドンナがぁあ゙〜!!」
よくわからないけど、私は男性の皆さんに背後から悲鳴を浴びせられた。
ふと隙間から見えた、遠くでニマニマと口元に手を当てて肩を揺らしている友人の姿。
グッと親指を向けられ、苦笑いを返すことしかできなかった。