第4章 じゃあ、オレのになって《三ツ谷隆》●
「なーんか視線感じるなぁと思ってさ」
「えっ、あ、ごめ…っ」
「ふ、はは!嘘だよ。オレが話したかっただけ」
「…ぅ、ええ…?」
「久しぶりだな。元気してた?」
「あ、うん、久しぶり…元気だったよ、…?」
三ツ谷くんの、…なんかズルいセリフに、隣にいる友人は顔を覆って「ふぉ、ぅおぉ…ッ」と仰ぎながら悶絶している。
私も、三ツ谷くんの見た目だけじゃなくて、からかい方も大人っぽくなったなぁ〜なんて、頬を染めるのも忘れて口を半開きにしてしまう。
「その服いいな。似合ってる」
「えっ!?あぅ、ッそ、そう、かな…!?」
「? なんで緊張してんの?」
「しっしてないよ別に!全然ッ!!」
慌てて手を振って否定するけど、私の嘘を見抜いているらしい三ツ谷くんは喉仏を上下させて朗らかに笑っている。
ああ、やっぱりかっこいい。
所詮は若かりし頃の恋愛だ、なんて甘く見ていたけど…約3年間想い続けただけあって、簡単には消え去ってくれない。
ポケ〜ッと目の前にいるイケメンを見つめながら脳内お花畑に引越ししようとした時、悶絶していた友人がグイッと私の腕を引っ張った。
驚いて転びそうになるも、何とか足をふんばって堪える。
何!?と怒る間もなく、すかさず私に耳打ちしてきた友人は…
「今日くらいは積極的にいきなよぉ?二度と機会ないかもしんないし、もういい大人なんだからさ♡」
チュッと投げキッスを飛ばし、ウィンクをお披露目して手を振りながらその場をスキップして去ろうとする。
ちょっと待って何してんの何言ってんのッ!??と慌てて振り返った瞬間、間の悪いことにどこか聞いたことのある声が会場に響いた。
「2組〜!二次会行く人〜俺んとこ来て!」
にくみ…2組?って、私がいたクラス…
声のした方を見れば、3年の時に同じクラスだったリーダー的存在の人が手を高く挙げていた。
三ツ谷くんもその人を見つめていたけど、すぐ私の方を振り返って…こてん、と首を傾げる。
あ、星が飛んだ。
「…蕪谷どうする?行く?」
「え、うーん…」
三ツ谷くんは行くの?なんて…高校時代の時と同じようなノリで聞くことはできなくて。
でも、たった今、ほんのちょっと話しただけだし…もうちょっとだけ、一緒にいたいなぁ、なんて…思っちゃったり。
積極的に、か…