第3章 甘えて、いい…?《佐野万次郎》●
「…ま、じろ…?」
「うん。蛍の万次郎」
「ぁ…〜ッ」
「…怖かったな」
私の両手を自分の頬に持っていく万次郎は、私に頬を包みこませると、空いた片方の手でそっと私の目尻を指で撫で、もう片方の手で唇をゆっくりとなぞった。
たったそれだけの動きで、冷えていたはずの体が芯から指先まで一気に熱を帯び、じわじわと視界が歪んでいく。
「っ、〜こ、怖かった、すごく怖かった…ッ」
「ん」
「…わ、別れる、なんて言って、ごめんなさいっ」
「ん。めちゃくちゃ悲しかった」
「っ、うぅ…ごめ…ッ」
「…言いたいこと全部言えた?」
「グスッ、…うん、い、言っ…」
ほんとに?と首をかしげた万次郎はいたずらに微笑んで、頷こうとした私の口の中に親指をゆっくりと差しこむ。
くちゅ、と音を立てて舌の裏側に入った親指は、舌先を撫でたり、爪で引っ掻いたり…。とある行為を思い出させるその動きに、顔に熱が集まってしまう。
同時に、万次郎の親指がわざと音を鳴らすような動きをするせいで、腰が勝手にビクついた。
「ぁ、ふッ…ん、ま、まだ、です…」
「ん、だよな。ほら、言って」
「っ…さ、寂しかった、会い、たかった…」
「うん」
「…好き、っ…大好き、万次郎と一緒に、いたいっ、離れたくない゙ッ…グスッ、そばにいてほしいのッ…!!」
「うん」
「ギュッて、強くギュッてしてほしいっ」
「はーい」
「っき、…ちゅーもして、いっぱい、ッ」
「ん、」
万次郎の頬に置いていた手をそのまま滑らせ、柔い髪を梳きながら後頭部に手を回す。
誘うように口を開けば、優しいキスじゃなくて、当たり前のように万次郎は舌をねじ込んで私のそれに絡めてきた。
ついさっき私の唾液で濡れた親指は、くすぐるように私の耳をいじって。
もう片方の手は、私の腰に回って…パジャマの裾を持ち上げるようにまさぐってくる。
それに応えるように、返事の代わりに万次郎の頭を抱えこむように引き寄せて、キスを強請る。
嬉しそうに目を細める万次郎は、私の口の端からこぼれた唾液を舐めとって…下唇を舐めたと思えば、いきなり強く舌に吸い付いてきた。
「んッ!?ふぁ、ゃ、んぅ」
「いっぱいちゅーしてって言ったのお前だろ」
「ぁんっ、ンン〜ッぅ」
約1週間ぶりのキス。
気持ち良すぎて、下腹部がキュッと疼いた。