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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第16章 今の、ファーストキス?《場地圭介》




蛍はエマと違って、東卍の集会には参加しない。つまり場地と蛍が会える確率は、ドラケンとエマが会う確率よりも特段に低いということ。
だからこそ二人を会わせる機会を作って少しでも進展を!と、大好きな姉のために何か力になりたいエマの気持ちを察したマイキー。
自分の恋路のことは置いといて姉を案ずる妹を微笑ましく思い、マイキーはゆるりと口角を上げる。



「うちに呼ぶ?夏休みだし、宿題全然やってねぇんじゃねーの、アイツ」



そう。現在は夏休み真っ只中。
5教科のドリル、読書感想文、自由研究。その他多数の宿題を出される、中学生の夏休み。
集会に来ない蛍が場地に会える機会は、きわめて少ない。ならば佐野家に呼ぶことが最適。宿題をするため、という明確な目的もあるから、突然招かれても疑われることはないだろう。



「あ、勉強会、みたいな…?」
「ウン。何人か呼んでさ。手っ取り早くねぇ?」
「勉強会かぁ…うん、ふふ、楽しそうっ」



自分とそっくりな顔である双子の姉が浮かべた、柔らかい笑顔。少しだけ頬が赤く染まったその様子に、マイキーもエマも、釣られて笑みをこぼした。



「それだぁ!宿題終わらせることもできるし、ネェは場地と会えるし…一石二鳥じゃん!さっすがマイキー!も〜大好きっ」



大きな音をたてて立ち上がったエマは、イカガワシイ本をテーブルに放り投げたマイキーに抱きついて擦り寄った。
「ダレ呼ぶ!?」とテンションが上がっているエマの相手をするマイキーは、起き上がって携帯に何やら打ち込んでいる。
キャッキャと一気に騒がしくなった家内に、傍観していたイザナは真一郎に雑誌を押し付け、エマとは正反対に静かに立ち上がった。



「ヒナ呼びたい!」
「じゃあタケミっちもだな。…場地が来るなら千冬と一虎もか」
「ドラケンも呼んでね!?」
「おー」



「あんまりはしゃぐな、部屋が暑くなる」と言ったイザナは「ニィは黙ってて!」とエマに言い返されて、眉を寄せながらその場を去ろうとする。
そんなイザナの服の裾を掴み、蛍は慌てて引き止めた。



「ねえ、イザナお兄ちゃん」
「ン?」
「あの…」



少しだけ話したくて引き止めたはいいものの、いざとなると言葉が出てこなくて口ごもれば、イザナは「どうした」と待ってくれた。

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