第16章 今の、ファーストキス?《場地圭介》
今回の蛍の件についてマイキーが思い出すのは、小学校高学年の頃。
学校からの帰り道、たまたまあの日はいつも一緒である春千夜も蛍もいなくて、マイキーと場地が二人で下校していた。
いつも通りワイワイ騒ぎながら歩いていた中、場地が突然立ち止まりこう言ったのだ。
『なあマイキー、蛍ってさ、…好きなヤツ、いんのかな』
棒付きキャンディーを口内で転がすマイキーは、思わず目を見開いて場地を振りかえって見た。
モジモジと手遊びをする場地が、しゃがみこんで唸り声をあげている。
『…知らねー、ケド……なんで?』
マイキーは、聞かずとも答えはわかっていた。
でも自分の双子の姉に関することをあやふやなままで記憶していたくなくて、キャンディーを口から取り出して答えを待った。
『いや…オレさ、実は…』
震える口で告げられた、自分の姉に対する幼馴染の想い。
その時の場地の顔色は、ついさっき蛍が見せていた顔色とそっくりで。耳まで赤かったことをマイキーは忘れられずにいる。
マイキーはあの時、「そっか!」とただ場地に笑って見せた。もし蛍と幼馴染がコイビトになれば、今まで以上に遊べんじゃん!と単純な考えだった。
しかし未だに、あの頃と変わる気配のない場地の蛍へ向ける熱のこもった視線に、自然と胸中で場地を応援するようになり、間を取り持ったり何かと機会があれば二人を一緒にしようとしたり…マイキーなりに行動するようになった。
マイキーは場地の想いを知っている。何年も前からずっと。
今まで蛍の恋バナを耳にしたことが無かったから不安に思うこともあったけれど、今日、ようやく蛍の場地に対する想いも知ることができた。
だから、どうすれば場地と蛍がイイ感じになってあわよくばお付き合いできるか…というエマの問いに、マイキーは腹から声を出して言ってやりたいのだ。
場地はなぁ、蛍のことが好きで好きでずぅーっと何年も前から頭抱えてんだよ!!
それからエマもさぁ!ケンチンもエマのこと好きなんだから、そんなさぁ、…もっ、悩むなって!!
あ゙ーーじれってぇ!!!
ダブル板挟みのマイキーはある意味、佐野家で一番の苦労人である。