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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第16章 今の、ファーストキス?《場地圭介》




銀髪と紫水晶のような瞳をもつ佐野家の美しい次男坊は、キョトンとした顔で首をかしげ頬杖をついた。
通常、イザナのあざとくも気だるげなその仕草を見た世間一般の人類はきっと頬を染めるだろうが、生憎と佐野家の兄妹たちは見慣れてしまっているのでイザナが発した言葉に目を見張った。



「砕けちゃダメだから相談してるのぉッ!!!」



ドンッ!とテーブルに拳をぶつけたエマに蛍の肩がビクリと反応し、突然の打撃音に少しだけ眉を寄せるイザナ。テーブルに突っ伏していた真一郎にはその振動がダイレクトに伝わったらしく、小さく呻き声がもれている。

コレ!といったふうのアドバイスが二人の兄から得られず、エマの胸の中がモヤモヤムカムカして落ち着かない。
長男次男のことは決して、誓って嫌いなわけじゃないけれど、エマは胸中で怒りを大爆発させていた。
(使えなぁい!こんな微塵もアテにならない答えが返ってくるなんて…ニィも真兄も何でそんな女心理解できないの!?そういうとこは似ないで欲しかった!!)
掻きむしらんばかりに頭を抱えて、最終手段!!!と勢いよく振り返った。



「ニィも真兄も、二人して可愛い妹に対してデリカシーなさすぎなの!ちょっとは良いこと聞けるかなって思ったのに!も〜何とか言ってやってよ、マイキー!!」



振り返った先、真一郎の部屋から盗んできたイカガワシイ本をソファーに横になりながら読んでいる、佐野家三男の万次郎こと、マイキー。
シン、と今度こそ本当の意味で静まりかえる中、本のページをめくるだけで返事をしないマイキーに四人の視線が集まる。



「………んー」



四人の話を全く聞いていないようで実はガッツリしっかり聞いていたマイキーは、そのまま無視を続けた場合、末妹に怒られてしまうことは理解している。だから本から少しだけ視線を外して、エマが求めているアドバイス云々を考える振りをして……数年前の出来事を思い出していた。








話題の中心である蛍の想い人、場地圭介は、マイキーと蛍の幼馴染であり、文字通り小さい頃から一緒だった。
もう一人の幼馴染の春千夜と遊んだり、ご飯を食べたり、昼寝したり。毎日のように一緒にいたことで友達と言うよりは家族と言った方がしっくりくるほど、仲が良かった。


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