第2章 その面ぶっ潰してやる《佐野万次郎》
「あ゙?」
「今何つった?」
「コロスって聞こえたけどぉ?物騒だな〜マイキーく〜ん」
「蛍チャンあの役立たず女より可愛いからさっさと喰いたかったけど…先にアイツ潰しとく?」
「そーすっかぁ。お楽しみは取っとくってやつで」
「誰からいく?」
「最後潰すの俺やりて〜!」
「じゃあ俺か、ら゙ッ」
手首を回しながら前に出てきた男を始めに殴った。
こめかみを殴るつもりが、少し高さが足りなくて頬を殴ることになったけど、倒れた男はそのまま動かなくなったから結果オーライだ。
あ然とする残りの男たちは、オレを見つめながらピクリと指先しか動かすことができないようで。
あーやっと静かになった、と思いため息を吐いた。
「さっきからゴチャゴチャうっせぇんだよ。蛍に唾飛ばすなよ汚ぇな」
オレが喋っても尚動かない男たちに、オレは一切の躊躇もなく、走りだして一番近くにいた男の顔面ど真ん中を蹴って地面に叩きつけた。
「蛍に触ったやつ出てこい。先に殺してやる」
目を見開いて睨みつければ、蛍の上に乗っていた男が怯えるような目でオレを見つめ、ゆっくりと立ち上がって蛍から離れ後ずさる。
それを合図にオレは、ただひたすら男達を一人残らず潰し…殺すことだけを考えた。
顔も、腹も殴って蹴ったせいで、返り血をたくさん浴びた。
地面に倒れた男の顔を蹴飛ばせば、歯が数本飛んだ。
骨が折れる音も聞こえた。
慈悲なんてもんは存在しない。
あってたまるか。
蛍に跨っていた男は、とりあえず蛍を触った両手を踏み潰して、顔をタコ殴りにした。
一生、誰も抱けないようにイチモツを潰そうかとも思ったけど、犯罪者になりかねないからそれは何とか抑えた。
正気に戻ったのは、ポケットに入った携帯の着信音が響いたおかげ。
蛍に一番触れていた男の顔を踏み潰そうとする直前だった。
結わえていたはずなのにいつの間にか解けて落ちてきていた髪をかき上げて、着信の相手を見れば場地で。
「…何」
《そっち済んだか?》
「……あー、危うく殺すとこだった」
《っは、グッドタイミングってやつだな!》
大口を開けて笑っているだろう幼馴染の声で気持ちが落ち着いて。
知らぬうちに疲れていたのか、ため息が溢れた。