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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第2章 その面ぶっ潰してやる《佐野万次郎》




港の第4埠頭、2番倉庫に近づいていくと、見張りの男が5人いて。
煙草を吸いながら雑談をしていたけど、オレのバブの音に気づいて煙草を靴底で踏み潰した。

ポイ捨てしてんじゃねーよ…と冷静に思いながら、バブのエンジンを止めて鍵を抜く。
唾を吐き捨てた男に嫌気がさし、思わず舌打ちをした。



「あ゙?オマエ今舌打ちしたかぁ?」
「無敵のマイキーってお前だろぉ?…はっ、ただのちっせぇガキじゃん!所詮は中坊だろ!」
「んで?オヒメサマ助けに来たのかよ。今は向こうでお楽しみ中だぜ〜」
「番号消させて着拒もさせたはずなのに、よく来れたな!どんだけ大事に゙ぅぐあッ」



よく喋る口だな、と思ってイライラしてきて、黙らせたくて顔面を蹴飛ばした。
そもそも話す気なんて微塵もねぇし、早く中にいる蛍の顔が見たい。



「…ッ、は?」
「お前今何し…オ゙ぐッ」
「なん、なんだおまっゥアァ゙ッ、ヒッがっ」
「…るっせーんだよ。喋んな」



適当に蹴って殴り飛ばせば男達は動かなくなる。
地面に転がって起き上がる気配がしないそれらを一瞥して、靴音を響かせながら明かりが灯る倉庫へ向かう。

下品な笑い声と、鉄パイプの転がる音。
殴られたり蹴られたりしている音は聞こえないけど、無意識に歩く速度が速くなる。

シャッターを開けたまま倉庫の中にたむろしている男…約10人。
足を踏み入れれば、オレの靴音に気づいた男達がこちらを見た。



「お!無敵のマイキー王子がご登場〜!」
「あ〜れ?もう来ちゃったの?交渉失敗か〜あの役立たず女」
「良かったなぁ蛍チャン、別れたはずの王子様が来てくれたぜ?」
「でもコイツ電話かけたの女だろ?エマって呼んでたし」
「ま、潰しゃあ良いだけの話〜」
「マイキーく〜ん!そこで黙って見てろよ?やっと抵抗しなくなってこれからおっぱじめるトコだからぁ」
「まあ気絶してっけどな!」



ギャハハハ!と豪快に笑ううるさい男たちの、中心。

制服で、でもワイシャツが肌蹴て下着が見えたまま、知らない男に乗っかられて横たわっている蛍の姿が目に入った。
本当に気絶しているのだろう。片方の頬が腫れて、口の端から血を流している蛍は、目を瞑ってぴくりとも動かない。

オレの、蛍に…傷をつけた。



「…── 殺す」


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