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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第13章 パステルピンク《今牛若狭》●




「こ、こんにちはぁ…」



とりあえず笑顔を返しておこう。
頬が引きつるのは許して。

総長は奥にいる、と教えてくれた彼らにお礼を言ってその場を去ろうとすれば、「姐さんって呼んでいいスか!?」と何故か鼻息を荒くしだした彼らに二度目の苦笑いを返して適当に了承し、真ちゃんの元へ向かってペダルを漕ぎはじめた。
突然出てきた人とぶつかったり、誤って轢いたりしないよう気をつけながら人だかりを避けて脇の方を走り、興味深そうにこちらに目を向ける人達にペコペコと軽く頭を下げる。

その異様なざわめきを不思議に思ったらしく、立ち上がってキョロキョロしている真ちゃんが視界に入る。
身内の姿に安堵してしまい、思わず「真ちゃーん!」と手を振れば、こちらを見ていなかった人達も目を向けてきて…あら大変。
注目の的になってしまった。



「え、蛍!?」
「ごめん、来ちゃった」
「なんで、」
「携帯電話わすれてるから!もう、“携帯”の意味ないじゃんっ」



帰りに連絡してって言ったのに!と自転車に乗ったまま真ちゃんの目の前で停止する。
キュロットスカートから携帯を取り出して手渡せば、真ちゃんは申し訳なさそうに笑いながら謝った。



「わざわざサンキュ。怖い目に合わなかったか?」
「大丈夫。代わりに姐さんって呼ばれたけど」
「はは、そりゃいーな!」
「えー?別に嬉しくないよ」



じわじわと額に滲んできていた汗を指先で拭えば、真ちゃんは飲みかけのお茶が入ったペットボトルを手渡してくれる。
珍しくも、コーラではないらしい。

身内だし、私にとって真ちゃんは関節キスを気にするような相手でもない。
まだ少し冷えているそれをありがたく貰って数口飲めば、真ちゃんを囲うように座っていた三人の男の人たちが私をジッと見上げていて、目が合った。

一人は、何度か会ったことがある真ちゃんの幼馴染の明司くん。
あとの二人は…創設メンバーかな?



「えっと、こんにちは」
「蛍ちゃん久々だな。すげぇ可愛くなってんじゃん」
「誰だ?まさか真一郎のヨメ?」



少し色黒で体の大きい人がとんでもないことを言ったから、慌てて首を振る。
「真ちゃんが彼氏なんて有り得ないデス」と真顔で言えば「蛍ひどい!!」と真ちゃんは涙目になってしまった。


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