第11章 梵天の華Ⅲ
数十分後、溶き卵と刻んだネギを入れただけの塩味のシンプルなお粥を完成させ、談笑していた二人を呼ぶ。
食べ始めた直後から「あ゙〜沁みる〜」…と熱そうにふーふーしながら食べ進め、手を止めることなくお粥を完食したランさんとリンドウさん。
聞くと、寝不足だったらしく…そのせいでこんな時間まで私と共に眠ってしまったと話していた。
ごく普通のお粥をずいぶんと気に入っていただけたようで。
おかわりを繰り返した二人の食べっぷりのおかげで、さすがに多く作りすぎたかな?と思っていた小鍋の中は空っぽ。
昨夜、間違って多めに炊いてしまったご飯が役に立って良かった。
私も遅れて完食し、改めて自己紹介をさせてもらった。
あまりにも二人の情報が少なくて困惑していたけど、ゆっくりと時間を気にせず会話をして…色々と知ることができた。
まず、二人は春千夜さんと同じ、梵天の幹部だそう。
よくよく考えれば、梵天ではない人物がここに…春千夜さんの家に来るわけがないのだけど。
そして驚いたことに梵天に保護されたあの日、ビルを出た時からずっと気絶している私を二人が…主にランさんが介抱してくれていたらしい。
確かに私はあの時、梵天の基地で目覚めてから紫色の髪の人と首元の刺青を見ている。
それが彼らだったなんて…。
熱があったり、薬物に関する副作用だったりと体調が良くなかったせいで記憶は朧気だけど、二人にどこか見覚えがあったのはそのせいかと気づいた。
「あの時のオマエは凄かった」と二人で顎をさすりながら色々なことを聞かされ、何だかとてつもなく恥ずかしくなった。
あの時は私も必死だったんです…。
途中、洗い物をしたりコーヒーを入れたり…でも会話は止まらなくて。
楽しくて、まるで家族といるような平穏な時間。
本当にかの有名な梵天の幹部なのか、と疑ってしまうのは無理もない。
それに…
お兄ちゃんが二人、増えたみたい。
楽しそうに、くっついたり小突きあったりしている二人を見て「本当に仲のいいご兄弟なんですね」と言えば、ランさんに「蛍もお兄ちゃんいるんだろォ?」と言われて。
少し照れながらも優しい兄のことを話した。
兄の名前を聞かれて答えたら、ランさんが一瞬だけ無表情になったけれど…
そんなこと無かったかのようにまた話し始めたから、私の気のせいかもしれない。