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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第11章 梵天の華Ⅲ






「蘭さんと竜胆さん、お花と同じ名前なんて素敵ですね」
「は?」
「ン〜、そう?」
「はい。私、お花が大好きなので…何だか羨ましいです」



ソファーに移動して二人に挟まれて座り、テレビの音量を下げたあとに二人の名前の漢字を聞いた。
素敵だなぁと思った私は、そのまま口に出して言ってしまい…。
さすがに反社会勢力の幹部勢に言う言葉じゃなかったかな…?と、心中とてつもなく焦る。
お花を愛で続けてきた私は、お花に関する話題がでるとこの嬉々とした感情を抑えることができないのだ。

思わず言ってしまった言葉。
機嫌を損ねたり、怒られてしまったらどうしよう…?



「へぇ、蛍って花好きなんだ?…うん、ぽいわ〜」



怒られるかも、と少しでも思った自分を笑いたいほど、蘭さんはソファーのひじ掛けに頬杖をついて優しく微笑んでくれた。
竜胆さんも、少し耳を赤くして照れているようだけど、怒っている様子ではない。



「…なんかさぁ、オマエ変わりすぎじゃね?」
「え?…元々こんな感じだと思いますが…」
「まァ、薬の影響もあっただろうけど。別人みてぇ」



そう言うわりに真顔の竜胆さんは、蘭さんと同じ瞳でジッと私を見つめている。

…梵天の皆さんは、なぜか顔の偏差値が高い。
私の兄もイケメンの部類に入ると思っていたけど…彼らは群を抜いているのだ。
自分の顔がいいことを自覚していないのか、わかっている上でのワザとなのか…計り知れないけど、あまり長時間見つめられると照れてしまうため、慌てて目を逸らした。



「女っつーより、少女って感じ」
「と、歳はもう少女じゃないです」
「こんな妹いたら可愛がってただろうな」
「…え、妹?」
「ン、こっちの話」



そう言うと竜胆さんはテレビに目を向けてしまった。
直後、蘭さんのいる方から肩をつつかれた。
ソファーの真ん中に座っている私の髪をいじる蘭さんを振り向けば、微笑んだままの表情を崩すことなく私を見つめていて。



「なぁ蛍ぅ」
「はい?」



あまり見つめないで欲しいのに…と思いながら首を傾げれば、少しだけ目を細めて…ゆっくりと口を開いた。






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