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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第11章 梵天の華Ⅲ





「妹がいるって、こんな感じなンかな」
「…さぁ?オレには弟しかいねぇし」



女を見下ろすオレの髪を乱すように、兄貴はぐりぐりと頭を撫でてきた。

…コイツのことを嫌い嫌いと言っていたけど。
少し考えを改めてた方がいいか?なんて、オレらしくもないことを思う。
確かに、兄貴に銃を向けたことは今でも思い出すとムカつくし、たぶんずっと許せない。
でも、コイツもそれなりの覚悟があって銃を手にしたわけで、おそらく相手が兄貴じゃなかったとしても銃を突きつけていたはず…だから。


呆然としていれば、兄貴に頬を指でつつかれて。
ふとあくびが出て、つられたらしい兄貴も大きくあくびをして…今日は2時間しか寝ていないことを思い出した。



「…ねみぃ」
「蛍チャンと一緒に寝るか?」
「は、いや別にオレは一緒じゃなくていいけど……っ、え」



ベッドから離れようとしたけど、ジャケットがツンと引っ張られて進めず…思わず振り返る。
兄貴と同時にそこを見れば、眠って意識がないはずなのに女がオレのジャケットの裾を掴んでいて。



「……」
「…行くなってよ?」



振り払うことも出来たのに。
ニヤつく兄貴に顔を覗き込まれて、大きなため息と同時にベッドに腰かけた。
掴まれているジャケットは脱げず、仕方なく…ゆっくりとベッドに横になる。
体ごとこっちを向いたまま目を瞑っている女の顔が間近にあり、…女と並んで寝ることには慣れているはずなのに、なぜか体が強ばった。

…ジャケットに皺がつくじゃねぇか…



「じゃーオレも♡」
「え、狭くね?」
「蛍チャン抱き締めればいけるだろ」
「いや、」
「りんど〜何かオマエ童貞みてぇだぞ?」
「なっ!?ど、」



童貞じゃねぇ!!と叫ぼうとして慌てて飲み込んだ。
コイツが起きたらめんどくさい。

女を挟んでオレとは反対側の壁際に寝転んだ兄貴は、女のつむじに鼻を押しつけるようにして顔を埋め、腰に抱きついて目を瞑った。
さすが手馴れてるよなぁ、と他人事みたいに思うけど…
オレも人のことは言えないくらい女を抱いたことはある。

でも…状況が違うだろ?



「ふぁ〜…まだ9時じゃん、連絡来なけりゃ今日は休みってことで」
「……ウン」



何でこんなことになってんだ?という考えは、眠気のせいで頭の隅に追いやられた。


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