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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第10章 黒龍の泣き虫くん②《佐野真一郎》




「…何してんの」
「え?あ、いやこれは、」
「何これ。おいコラ」
「だ、だって寝顔可愛かったんだもん!!」
「だもんって言うな女子か」
「やめ、返せ、あッ」



あたしの寝顔を写真におさめようとしていた携帯を真の手から奪い取り、フォルダに一枚保存されて残っている少しブレた写真を削除した。
「あ゙ー!!」と泣きそうになっている真の腹に半ば携帯を投げ返し、部屋の入口に目を向ける。

そこには、ポカンと口を開けてマヌケな顔をしている臣とワカ、ベンケイがいた。



「あ、来てくれたんだ」
「…お、オウ、…入っていーか」
「ウン、どーぞ」
「…真ちゃん、無事なの」
「まーな!頭4針縫ったけど」
「相変わらず弱ぇな」
「うっせ!」



臣、ワカ、ベンケイの順にそれぞれ反応しながら、ベッド脇にパイプ椅子を自ら設置して寛ぎはじめて。
真とあたしが好きな飲み物やお菓子が入った袋をワカに手渡され、お礼を言いながらそれを冷蔵庫や棚に入れた。

ちょうど寝起きで喉乾いてたし、ありがたくその中のお茶をいただこうと思う。



「検査で1週間は入院だってよ。長ぇ…」
「頭やられてんだから当たり前だろ」
「飽きんじゃん!お前ら遊びに来いよ」
「いや暇じゃねぇんだわ…」
「で?犯人は」
「2人…と言いたいとこだけど、武器持ってたのは1人。店に飾ってたバブが目当てだったみたい」



話しながら、「コーラ飲みてぇ」と言った真に飲みかけのお茶を手渡し、泣いたせいで少し腫れぼったい目をこする。
顔洗いたいなと思いつつも、考え込む4人の会話に耳を傾けた。



「は?マイキーの幼なじみ?」
「1人な。…まあ、たぶんもう1人も万次郎のダチだろうけど、一瞬だったからちゃんと覚えてねぇ」
「…ネンショー入りだな」
「ん、だろうなと思ってる」
「まあお前が死ななかったから、不幸中の幸いってやつだな。期間は短ぇだろ」
「あとでたぶんサツが来て事情聴取されッから、ガンバ」
「あ゙〜めんどくせぇ…帰りてぇ。帰ろ蛍」
「あたしはお昼食べたら帰るよ」
「え?いや連れてってくれよ」
「入院患者が何言ってんの」
「え、は?ヤダ置いてくなよ寂しいだろ!?」
「うるさい騒ぐなっ」



思えば、今のあたしは寝間着姿。
スウェットのズボンにTシャツだけど…何だか急に羞恥がおそってくる。
今さら、だけど。

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