• テキストサイズ

【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第10章 黒龍の泣き虫くん②《佐野真一郎》




結婚、入籍と決まったからには、両家に挨拶に向かわなければならない。

一応二人で正装をして、最初にあたしの祖父母の所へ、次に刑期が開けて出所後は一人暮らししていた母のアパートに行った。

男に縛られない生き方を…とあたしに言った母だけど、入籍の報告に泣いて喜んでくれて。
「娘をよろしく」と…母は泣きながら満面の笑みで真と握手を交わした。
真はボロ泣きで、あたしもつい貰い泣きしてしまい…最後はみんなで笑って、母があたしたちの出会いを聞きたいからと一緒にご飯を食べに行った。


次の日、真の実家に挨拶をしに行って…
真の弟妹である万次郎ことマイキーとエマは、懐かれていたこともあって抱きついて喜んでくれた。
お爺さんも「ワシが生きているうちに曾孫に会わせてくれ!」と言って頭を下げてきて…気が早いしめちゃくちゃ照れた。

「じいちゃん曾孫、何人見てぇ?」とニヤついて言った真には一発平手打ちをかましてしまったけど。
あたしは悪くないと誰か言ってくれ。

式は、もう少しお金を貯めてから…ということで、来年の9月頃にしようと決めた。



友人や仲間たちに報告したり、指輪を買いに行ったり、式場をおさえたり…いろいろと準備をしていたら、あっという間に夏が来ていて。

ある日の夕方。
仕事から帰宅して真の手伝いをしていると、マイキーの友人であるドラケンのゼファーの排気音が近づいてきて。
作業の手を止めて外を見れば、ドラケンと、ゼファーの後ろに乗っているマイキーの姿があった。



「あれ?」
「蛍さん!ちわっす!」
「久しぶりー」
「やっほー蛍さん」
「おかえりー。…って、マイキー、ホーク丸どした?」



今朝、マイキー自身の愛機であるホーク丸に乗って、友人たちと海に行くと言っていたのに。
ホーク丸じゃなくてゼファーに乗せられて帰ってくるなんて…おかしい。



「あー、蹴飛ばした」
「は!?」
「ンぶッ!ゲホ、ゴホッ、ぅ゙…ッ今何つったマンジロー!?」



コーラを飲みながらあたしたちを横目で観察していた真は、マイキーの一言で口に含んでいたコーラを勢いよく吹きだした。
真の顎を伝って、Tシャツにこぼれる透き通った茶色い液体に、無言でティッシュを差し出せば拭くよりも先に鼻をかんでいて。
鼻に上がったらしい。
炭酸だからキツいやつだ。


/ 257ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp