第2章 その面ぶっ潰してやる《佐野万次郎》
「は、…まじ、か…嘘だろ…」
「こんな嘘つかねーよ…」
「給食くったのに珍しく寝てねーと思ったら…。そりゃ昨日の荒ぶり方も納得いくわ」
「…なぁケンチン、どうすりゃいいかな…」
学校の屋上の手すりに両腕をつけてうなだれながら全部話せば、相談相手ができて気持ちが少しだけ軽くなった。
相槌をうちながら真面目に聞いてくれたケンチンは、手すりに背中を預けて座り、空を見上げている。
持つべきものは友、ってやつだな。
「…まあとりあえず、着拒されてんならエマに仲介頼むしかねーんじゃね?」
「……は、何でエマ?」
平然とした表情で言ったケンチンに、一瞬だけ思考が停止する。
集会の時は、よく二人で話してるのを見かけるけど…女子同士だからってだけで別に、仲介できるほど仲がいいようには見えなかったはず。
眉を寄せてケンチンを見下ろせば、目を丸くしたケンチンが口を半開きにしてオレを見上げていた。
「あ?お前知らねーの?エマと蛍仲良いだろ、小学校ン時から」
「………え、な、はあああ!??オレ知らねーし!何それ!オレだけ仲間はずれ!?」
「ちげーよ!つか何で知らねーんだよ!あんだけ毎日毎日飽きずに蛍蛍蛍言ってたくせによぉ!」
「いやそっ、そんな連呼してねーしッ!」
「恋は盲目ってやつだな」
「うっせーよ早くエマに告れっ!!!」
「なっバカ声でけーよ!!」
屋上だから、叫びあっているせいで空から校庭にまで響いている。
でも、オレとケンチンが屋上でサボってるのは日常茶飯事だし、オレたちを黙って見つめるような奴なんてこの学校にはいねぇから。
センセーに怒鳴られたこともないし。
「はぁ…でもそっか、エマって蛍と仲良いんだ」
じゃあ話は早い。
好都合だ。
今すぐ家に帰ってエマに……あ、エマ学校にいるわ。
「あー、エマ何組だっけ」
「やめろマイキー、学校で話すことじゃねーだろ」
「えー、待ってらんねーし」
「まじでやめとけ。エマに授業サボらすな」
「…ケンチンだってエマエマ言ってんじゃん」
「お前よりは言ってねーだろッ」
「照れンなって〜」
「ブッ殺すぞてめぇ…」