第8章 飛び級しますッ《場地圭介》
「…あのねエマちゃん」
「んー?」
「…どうやったらもっと、圭介さんに近づけるかなぁ」
「え?うーん…まあ場地もけっこう、鈍感っぽいからなぁ〜…」
「振り向いてもらえる日って…来るのかな…」
進展しているようで、そんなにしていないような感じがして。
どうしようもないくらい、不安になる。
私まだ学生だし、やっぱり子供っぽいのかな…とため息を吐けば、エマちゃんが「そんなことないよ」と微笑んでくれた。
「あの場地が、女の子にそういうことするってことは…だいぶいい線いってると思うよ?」
「…そうなの?」
「うん。ウチが知ってる範囲だと、場地が女の子にそんな対応してるとこ見たことないから。…だから、大丈夫だよ」
諦めちゃだめだからね?と言って、頭を撫でてくれて……少しだけ、泣きそうになる。
諦めない…うん、やっぱり諦めないことが大事だよね。
コツコツ積み上げるのが一番!だよね!
「ありがとう、エマちゃん。元気でたっ」
「そう?良かった!…ウチも長年片想いしてたから懐かしいな〜」
「ええ?エマちゃん可愛いのに、片想いだったのっ?」
「ふふっ、…ほんとは両片想いだったんだけどね?パパ…ケンちゃんってば、告白してくれたの高校卒業の直前だったんだよ?」
「えっ…うそ、そんな遅かったの?出会ったのって…いつだっけ、中学?」
「マイキーが家に連れてきた時だから…5年生くらいかな。ケンちゃんって顔に出ないけど、意外とシャイなんだ〜」
クスクスと笑うエマちゃんが、可愛くて…とっても幸せそうな表情をしている。
恋が実って…結婚もして、赤ちゃんも生まれて…ずっと好きだった人と幸せな人生を送れるなんて、どれだけ幸せなんだろう。
私にはまだ想像できないなぁ。
「なぁ〜、一虎と千冬は?休み?」
「千冬は休み。タケミチと嫁らと4人で遊園地いくんだと」
「ダブルデートじゃん!ほんと仲良いよな〜」
「一虎は昨日飲みすぎて、奥の部屋で死んでる」
「まじ?起こしにいこ〜っと」
「バッカやめろ!そうやってまたお前ら喧嘩すんだから!ほんっと性格悪ぃよなお前ッ」
「だぁって一虎いじんのおもしれぇんだもん!」
…何やら、お店の奥でマイキーくんが暴れている様子。
幼なじみっていいなぁ。
何でも話せちゃいそう。
喧嘩してもすぐ仲直りできそうだし。