第8章 飛び級しますッ《場地圭介》
「ゔ…寒ッ」
次の日、学校の帰り。
いつもなら塾に行っている時間だけど…気まずい今日に限って、塾がお休みなのだ。
なんてタイミングの悪い……てか寒い。寒すぎる。
9月中旬にさしかかったばかりなのに、今朝はいちだんと寒くて…カーディガンを着て学校に行った。
でも日中になると太陽がぽかぽかと暖かくて、こんなに暖かいなら帰りは着なくても大丈夫かな〜なんて考えて。
でもそれは、校内にいたからであって。
外の気温のことを考えもしなかった。
私のバカ野郎…めちゃくちゃ寒いじゃん…!
あと少しでお店に着くのに…カーディガンを学校に忘れたことを今更気づくなんて!ほんとバカ!信じらんない!!
スクールバッグを肩にかけ、両腕で自分を抱きしめて二の腕をさすりながら身震いする。
お店まであと少し。
暖房が付いていることを切に願う。
お店の看板が見えてきて、あと数十メートル。
昨日の今日だしとても気まずい…でも圭介さんに行くって言ったから、引き返したい気持ちを何とかおさえて足を進めた。
やっぱり今日は寒いせいか、いつも開け放たれているはずのお店のドアは閉じられていて。
動物たちが風邪ひくと大変だもんなぁ、うわ〜あと数メートルだ…と止めそうになる足を止めてしまわないように深呼吸を繰り返す。
圭介さん出てこないかなぁ…と、昨日の待ってる発言を思い出して心がぽかぽかし始めた瞬間、お店から誰かが出てきた。
いつもタイミング被るじゃん…なんてため息を吐いて、お店の前で立ち止まる。
あ、立ち止まっちゃった。
でもそんなことはすぐ頭の隅に追いやれるくらい、驚いてしまって。
お店から出てきたのは……昨日の、女の人。
寒いせいか、ポニーテールじゃなくてハーフアップのお団子にしている。
昨日は見れなかった、顔。
やっぱりめちゃくちゃ美人さんで、でも可愛らしさもあって、ほんとにスタイルが良くて…ルナが好きそうな顔だ。
な、何でいるの、ねぇ、やっぱり圭介さんの嘘つき!女の人いるじゃんッてか箒持ってんじゃん何で!?か、帰りたい!!
寒さにプラス泣きそうになって足がガクガク震えだす。
でもそんな私のことなんかお構いなしに…その人はこちらを振り向いた。
「…あ、いらっしゃいませぇ」
「ッご、…こんにちわぁ…」
うわぁぁイケボッ!!!!
……え、イケボ?