第8章 飛び級しますッ《場地圭介》
2日間の文化祭が終わって、ラスト1日は学校中の片付けをして…。
ようやく、振替休日。
圭介さんのことはずっと頭にあったけど、文化祭はもちろん楽しかった。存分に楽しんだ。本当は圭介さんにも来てほしかった…でもお店が忙しいから、しょうがない。
今日はお店の定休日じゃないし、圭介さんにも今日行くことを伝えている。
思う存分、開店時間から閉店までお店にいたいなぁ!…なんて思ってたのに、塾という厄介なやつがあって。
3時間、頑張って耐えた。
私すごい。
褒めて圭介さん。
ギュッてして。
その3時間がとてつもなく長く感じて…ようやく、終了の時刻。
チャイムが鳴ると同時に机上のものを片付けて、挨拶をして、ダッシュでペットショップに向かった。
移動するバスの中でそわそわとしながら、イヤホンをつけてスマホで音楽を聴く。
何年か前に流行った失恋ソング。
失恋はしてないし、今日は記念日でもないし、そもそもお付き合いすら始めてないけど、いつかそうなりたいなぁ…なんて、状況にはミスマッチな音楽だけど、会いたくて会い(ry…だからペットショップで待ってくれているだろう圭介さんに想いを馳せる。
バスを降りて、さぁ流れる汗もそのままに走れ!と、かいてもいない額の汗を拭いながら走った。
お店の看板が見えてきて、わ〜い!と思って…いた、ら。
お店から出てきた、圭介さんと…もう一人。
すらりと背が高くて、きれいな黒髪をポニーテールにして結っている、…後ろ姿だから確信はないけど、たぶん女の人。
…いや、女の人以外に見えない。
仲睦まじく…楽しそうに、圭介さんが笑っていて。
まるで、恋人のようで…二人が立っているそこだけ、地面がアスファルトじゃなくてお花畑のよう。
じゃれるように、圭介さんがその人の髪をぐしゃぐしゃと撫でて乱していて、女の人が圭介さんの肩を小突いて……嗚呼、幸せそう…なんて。
お似合いな、二人。
思わず、立ち止まってしまう。
…だれ…?
ねぇ圭介さん、その人…誰ですか?
何でそんなに…楽しそうなんですか?
私がいない間に…何で…
お店まで、あと十数メートル。
一度止まった足は、動いてくれない。
過去に流行った歌なんか聞いたから?
現実になった…とか…そんな冗談、全然笑えない。
…今日は、帰ろうかな。
踵を返して、遠回りして家に帰った。