第8章 飛び級しますッ《場地圭介》
「ルナおはよう〜!」
「おはよう蛍…て、まだ8時過ぎだよ!?ど、どうしたのよ、いつも遅刻寸前の蛍が!」
次の日。
学校に行くと、友達の三ツ谷ルナがすでに自分の席に座って待っていた。
いつも遅刻寸前、なんてだいぶ失礼だけど…事実だから仕方ない。毎朝先生に注意されても聞き入れず、懲りない私が悪い。
ちなみに、ルナが昨日のお弁当のミートボールを奪った犯人である。
圭介さんと出会ったおかげですっかりミートボールのことが頭から離れていたけど……会うと思い出してしまう絶望感。やるせない。
今日のお弁当のおかず、何か盗もうっと。
ルナのお兄様、料理がめちゃくちゃ上手でお弁当が美味しいから。
一度、お弁当を丸ごと交換したことあるからわかる。ウン。
「ほ、ほんとに珍しい…え、初めてじゃない?」
「そうだっけ?ルナと早くお話したくてさぁ!」
「ぅくっ、可愛い…!!」
高校…ではなく中学の入学式の朝、自分のクラスが表示された教室に足を踏み入れて数秒後、ギラギラと目を輝かせてナンパされた時からずっと仲良しのルナ。
「あたし美人な女の子が大好きなのッ!!!」と叫ぶルナに驚いて、同性にナンパ…?と思ったけど話してみると面白かったし、高校まで追っかけて来られたから()いつも一緒にいる。
?…はて、美人とは。
未だに謎である。
「昨日ね〜、ルナにミートボール奪われたし塾の宿題がバカみたいに多くてむしゃくしゃしてたからさぁ、この前話してたペットショップに寄ってみたんだけど、」
「え、あたしサラっと悪者にされてない?」
「店員さん…いや、店長さんかな?一目惚れしちゃってさぁ」
「へぇぇ?…あたしのお兄ちゃんよりイケメンなの?」
「…や、一目惚れするくらいだから…そうだよね」
真顔やめて怖い。
イケメンだよ、めちゃくちゃカッコイイんだよ圭介さん。
確かにルナのお兄様もカッコイイけどさ、…いや、好み?タイプってあるじゃん?
「名前は?」
「場地圭介さん」
「ばじ…え、ばじ?けいすけ?」
どっかで聞いたような…と考える人のポーズをするルナ。
え、知ってんの?と顔を覗き込んだら、ルナはブレザーのポケットからスマホを取り出した。
慣れた手つきだから…相手はお兄様だろうか。
…なんでお兄様?