第8章 飛び級しますッ《場地圭介》
一目惚れなんて、夢物語だとばかり思っていた。
白馬に乗った王子様がやってきて、貧しくて薄汚い格好をしていても数日後には何故かお姫様となってしまうという生まれながらにハッピーエンドをお持ちの美少女が「キミは美しい!」なんて言われて真っ白な歯を輝かせながら手を差し伸べる王子様に一目惚れされちゃってキャッ素敵!って美少女も一目惚れしちゃってそれがバレて例えば継母やいじわるな姉や魔女のお婆さんに邪魔される…けど王子様が王子様らしく権力を振りかざして?「キミを助けてあげるから結婚しよう!」と脅迫紛いなプロポーズをされてリーンゴーンと教会のベルが鳴り結婚おめでとう!おしまい♡……なーーんていうお話はただのおとぎ話であって?プリンセス系の物語とやらでしか一目惚れなんていう言葉は存在しないんだよッ!!!!って幼い頃からキラキラのドレスを纏った金髪の女の子が表紙の絵本を床に叩きつけていた私が、私が!!!
「おお神よ…」
まさか今生で一目惚れを経験してしまうとはッ!!!
誰が想像しただろうかッ!!!
お母さん見てる!?お空から見てる!?私ついに運命の人に出会ったよ!これからアタックするところ!あっごめんお母さんお家で晩ご飯の用意してるよねちゃんと生きてるよね!継母なんてこの世にいないし私一人っ子だし近所のお婆さんは何日か前に腰痛めてたね!!!
「お、お名前を…お伺いしてもよろしいですか王子様…」
「あ?誰だ王子様って」
「ちょ、え、場地さん知り合いですかっ?」
「いや知らねぇ」
「バジさんとおっしゃるのですか…?」
「あ?おう、場地圭介だ」
「バジケイスケさん…うッ、素敵!ケイスケさんとお呼びしても!?」
「おいてめぇ何言ってンだコラ」
「あー、別にいいけど」
「場地さんッ!??」
お店の前で話した店員さんが、ケイスケさんを庇うように私とケイスケさんの間に立ち塞がる。
くっ…これが茨の道ってやつね…!(違う)
「…とりあえず救急車呼ぶかァ?」
「行き先は教会ですかッ!??」
「いや病院に決まってんだろ、何言ってんだアンタ」
「場地さんとりあえず逃げてください、せめて隠れてッ!…つかアン…お客さん、猫見に来たんじゃないのかよッ」
「あ…にゃんこ…好きですけど、いや、あまりにも運命的な出会いというか…」
いや、運命としか言いようがない。