第7章 あげるから、もらって《松野千冬》●
「ほん、ばん?」
「ん、本番」
少し呼吸が整った蛍の横にある財布を手にとり、開いてゴムを取り出す。
袋を破いて、友人から教わった付け方で下着から取り出したオレ自身に装着した。
一度も触っていないのに、硬くなって反り勃っているソレに、思わず笑いそうになる。
いや、ならない方がおかしいよな。
ゴムは一個しかねぇけど、…今日は初めてだから蛍に負担はかけらんないし、一回で我慢しよう。
耐えろよオレ。
「…ちふ、」
「これが、今から蛍の、ココに入ンの」
「っ…!」
恥ずかしがる様子もなく、オレのゴムを装着する姿を見ていた蛍。
グズグズに蕩けて愛液が止まらない膣口を指さしてそう言えば、さすがに意味がわかったのか思い切り顔を逸らした。
「…ゃ、あの、あのね、千冬、」
「待ては聞かねーぞ」
「違うの、えと、聞いて欲しいことが、あってね?」
準備もできたし、さあ、と臨戦態勢に入った途端、蛍がゆっくりと起き上がった。
え!?と目を見開くと、蛍は両手でオレの頬に触れて…至近距離で微笑んだ。
「ほんとはね、…何日か前に、今日のことお母さんにお願いしたの」
「……は?」
「最初は渋ってたんだけどね?…条件つきで、OKしてくれたんだぁ」
二人とも、1泊2日の温泉旅行に行ってるの、と言いながら額をくっつけてきた蛍。
お義母さんから言われた条件を聞いて、オレは目の前が一瞬歪んだ。
一つ。学生のうちは避妊は必ずすること。
二つ。キスマークは、見えるとこに付けるとお父さんが千冬くんを殺しに行ってしまうかもしれないので、見えない所に付けなさい。
三つ。後日、必ず顔を見せに来ること。
つまり、だ。
蛍のお母様は今、オレたちがこういうことをしてるって分かってるわけで、…そしてこの状況を許してくれた張本人であるということ。
嬉しい反面、かなり複雑だ。
オレは思考が追いつかねぇぞ、蛍。
避妊はともかく…キスマーク、危なかった。
無我夢中で、オレは蛍の体の至る所に吸い付いていた。
でも、心のどこかで「見えないとこに…」って気持ちがあって、ギリギリ、たぶんギリギリ大丈夫なはず。
オレの理性を誰か褒めてくれ。