第7章 revenge4.5
病室のドアが開いた音がして、ゆっくりと私たちはお互いの熱を惜しむように離れる。
ごめんなさいと一言謝り、輸血パックを外し透明の液体が入ったパックをぶら下げたのは、30代半ばくらいの女性看護師だった。
この痛み止めの点滴が終わったら帰れるわよと、優しく微笑む。
テキパキと痛み止めの点滴に変えると、私たちを見る。
「包帯、変えるわね?・・・君はちょっと、外で待っててくれる?」
さっき無理矢理起き上がった為、包帯に血が滲んでいた。
万次郎がその言葉に、離れようとする。
「やだ、万次郎、いて・・・。」
彼は戻ってきて、横にあるパイプ椅子に腰を下ろすと、もう泣きやめと優しく微笑んだ。
入院着の紐に手を伸ばしシュルっと解いて、布を肩から下ろす。
すると、看護師さんが包帯を取ってくれて、ガーゼを取ると、縫われた傷口が露わになる。
ふと、万次郎に目をやると、その傷口を睨んでいた。
「自分から撃たれにいったんだよ・・・死ぬのなんて怖くなかった・・・だけど、今こうして万次郎といると、死ななくてよかったって、思う。」
「もう危ねぇとこには行かせねぇ。オマエに死なれたら・・・オレはどうやって生きればいい?」
悲しげに揺れた瞳が私を捉える。
看護師さんが血を拭き取り、消毒していく。
ツンと突き刺すような痛みに顔を歪める。
キレイに包帯を巻き直した看護師さんは、あとで親御さんが着替え持ってきてくれるわよと微笑み、病室から出て行った。
それから私たちは、真一郎さんやエマちゃん、場地さんの生きていた頃の楽しい話を、現実から目を背けるようにしていた。
どのくらい話していたかわからないが、点滴が残り少なくなってきた頃、ドアをノックする音が聞こえてきた。
返事をすると、母が中に入ってる。
「っ!?千冬!?」
「ウッス。」
母の後ろについてくるように入ってきたのは、いつも私を支えてくれた千冬だった。
私に笑顔を向けてくれる2人に、せっかく止めた涙が溢れ出てくる。
「ちふゆぅぅ、おかあさぁぁん・・・。」
母が頬を撫でてくれて、千冬が優しく微笑んでくれて・・・お疲れ様、よく頑張ったねと慰めてくれた。