第1章 日常
「…う…っ」
身体中がジンジンと痛みを訴えてくる
体を動かすことが出来ず、しばらくマットに横になることしか出来ない
辛うじて腕を伸ばし投げ捨てられた鞄を取り、スマホを見る
そろそろ部活が始まる時間だった
ここにはバスケ部やバレー部がやってくる
それまでにここから出ないと行けないと思いながらも思うように体が動かず、痛みだけが増していく
体を起こそうと力を入れようとした時だった
体育館倉庫の扉が開くと男子生徒と目が合う
「っ……!」
神崎 聡(かんざき そう)くんがこちらを見て慌てて近寄ってくる
「大丈夫…?宗!こっち来て!」
もう1人来ることに焦り私は咄嗟に立ち上がろうとするも力が抜け倒れそうになると、神崎くんが私を支えた
「どした?…っ!宮野じゃん!」
「…須藤たちだよね?」
神崎くんと志麻宗孝(しま むねたか)くんは隣のクラス
知っているとは思わなかった
「聡知ってんの?」
「海斗からちょっと聞いてさ、須藤が派手にいじめやってるって…でも直接見たわけじゃないから分からなかったけど、ここまでしてるなんて…」
「っ…お願いだから…黙ってて……」
私は2人にそう言って力をふりしぼり立ち上がり、鞄を拾って出ていこうとすると、神崎くんに腕を掴まれる
「っ…!」
「待って、放っておけるわけない。せめて保健室行こ?」
「…こんな姿で…行きたくない……」
「階段から落ちたって言えば何とかなる…俺ら支えるから行こ」
そう言われ首を振るも、神崎くんは私に保健室へ行くように促す
「俺らも先生には事情を隠すから保健室行くぞ。な?」
見かねた志麻くんも私に優しく声をかける
いじめられるようになって初めて学校の人から優しくしてもらえた