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オマエしか要らないから【東リベ/オメガバース/R18】

第2章 オマエしか許せないから


屋上で楽しい一時を過ごしていた時、急遽皆で土手に向かうことになりドラケン君の自転車に乗せてもらった。ドラケン君の大きな背中に捕まり先ゆくマイキーくん達を追いかける。

太陽が水面に浮かんで煌めいている。遠くのビルに明かりが灯るのを眺めながら、そよがせる風に、心地良さに身を任せた。

足場の悪い道は時折ガタガタと自転車を揺らしその度に「大丈夫か?」と後ろ見て様子を心配してくれるドラケン君は頼もしく、初めて男友達が出来たのだと自覚した。

ふとタケミチくんが川の土手沿いに自転車を止めた。
どうやらここが目的地のようでキョロキョロと辺りを探っている。

私達も降りて合流したが残念ながら土手には何も無かった様子で、タケミチくんがしょんぼりと肩を落としていた。
ドラケン君を横目に見ると何故だかニヤリと笑っているけれど見なかったことにしよう。

私達4人は土手に腰を降ろし何か話すわけでもなく川辺を眺めていた。
ふとマイキーくんが呟いた。

「オレ、10コ上の兄貴がいてさ、死んじまったンだけどね」
「!」
「無鉄砲な人でさ自分より全っ然強ぇ奴にも平気で喧嘩挑んじゃうの」

衝撃的な内容で思わず身構えたけれど
満面の笑みでお兄さんの事を語るマイキーくん。

「へぇ、かっけぇ人だったんスね!」とタケミチくんは笑顔で話を聞いていた。

ふとマイキーくんと目が合った。
眉を下げ少し困ったように微笑む彼に私は目を奪われた。

「兄貴の世代はさ、‪α‬階級とかあまり関係なかったんだ。皆仲間同士集まりあって好き勝手喧嘩ばっかしてさ···けど、いつの間にか‪兄貴のチームの連中でもαを優遇するような奴が増えてさ、変わっちまったんだ。」

「Ωなんてダセェ奴とつるむなってメンバーの1人が言い出してオレのダチのどこがダセェんだ?って兄貴モメてさ···」

「喧嘩クソ弱ぇのに···」と零した途端、シンイチローの笑顔が目に浮かんだ。口をつぐみ、川辺にあった小石を握りしめる。
やり場の無い怒りや喪失感が兄貴の話をする度に立ち込め渦巻いた。

ぽん、とドラケンの手がオレの肩を叩き、ドラケンが神妙な面持ちでじっとオレを見つめている。
(あぁ、ほぼ初対面の奴に話すことじゃないなんてオレでもわかってる。)

「さ、そろそろ帰るか!ケンチン、名前頼むわ」
オレは立ち上がり笑顔を戻した。
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