オマエしか要らないから【東リベ/オメガバース/R18】
第1章 オマエしか見てないから
――…考えてみればそうだ。
彼女は先週転入してきたばかりで只でさえ既存の生徒には物珍しい。
そんな子が転入早々ヒート(と思われる)状態に陥ってしまい、早退したのだ。
意図せず悪目立ちに磨きをかけてしまった彼女に忽ちクラス中…いや、今となっては校内全体で…希少なΩ性の生徒だと噂が広まった。
彼女が久々に登校した今朝から、不当に扱われていたのを目の当たりにしていたが自身のΩ性と向き合う覚悟がない俺が、彼女を庇う事への責任を背負う覚悟など持ち合わせて居なかった。
(否、そんな事は只の言い訳だ)
(マイキーくんがいう通り、何もしてねェな…俺…。)
己の不甲斐なさを恥じた後武道は口を開いた。
「苗字さん」
「はい…」
「俺、見てたのに行動出来なくて、逃げて…ごめん。」
怪我を心配し、寄り添い座っていた名前は武道からの突如の謝罪に驚きを隠せない。悲しそうな彼の表情は、その瞳は、偽りではないと思った。
知り合い程度の人をわざわざ自らリスクを冒して助ける人なんて居ない、と武道を庇う言葉を発しようとした矢先
「俺も、Ωなんだ。」
予想外の武道のカミングアウトにその場に居た武道とマイキーを除く2人は目を見開いた。
名前の驚きはすぐに安堵に変わった。
(初めて、同じΩの人に出会った…)
「ううん、大丈夫だよ。
これからよろしくね、タケミチくん」
「うん、よろしく。苗字さん」
夕焼けが2人を優しく包みどこか照れくさそうに
笑いあった後暫く2人は談笑し始めた。
少し離れた位置。
正確には武道を吹き飛ばした分の距離にマイキーとドラケンは居た。
「2人ともオレのダチなのに、オレより仲良さそう…」
「はいはい。めんどくせーから妬くなよ」
恨めしそうに不機嫌になりかけているマイキーに対しドラケンは静かに釘を刺した。