第3章 【第二訓】ジジイになってもあだ名で呼び合える友達の話
「あ、いた。山崎!」
デパートの屋上。
○○は隣の建物『ホテル池田屋』を望遠鏡で覗いている後ろ姿を見つけて駆け寄った。
「ここが桂の拠点?」
山崎の隣で腰を屈め、望遠鏡の先にある建物に目を向ける。
「ほぼ間違いなく」
本日正午頃、戌威星の大使館に爆弾が投げ込まれた。
現場を見張っていた土方は、テロの主犯と思われる桂小太郎が走り去る姿を目撃。
山崎は土方の命令で桂の潜伏先を捜索していた。
「桂っていったら、幾度となく真選組の追跡をかわしてるテロリストだからね。どんな人か楽しみ!」
ついさっき、屯所の一室で近藤と土方が話しているのを小耳に挟んだ。
――今、山崎があとを追っている。
それを聞き、○○は山崎に連絡を入れた。
アジトを掴んだと聞き、急いでこの場へやって来た。
「え、○○さん……まさか、興味本位だけで来たんですか?」
満面の笑顔を見せる○○を見て、山崎は頬を引きつらせた。
一応、○○は真選組監察という立場にある。だから、山崎は情報を○○に伝えた。
それに山崎にとって、○○は隊内で一番仲がよい人物でもある。
「まさか。それだけじゃないよ」
表情を一変させ、○○は真剣な顔を見せた。
桂は並の相手ではない。
ならば――