第11章 【第十訓】怪盗ふんどし仮面の話
「けえったぞー」
銀時と神楽が部屋に入ると、煎餅を貪り食っている○○が目に入った。
「○○隊員! 留守中の万事屋防衛、ご苦労でありました!」
神楽は敬礼し、背筋を伸ばす。
素早く反応した○○は同じように敬礼し、同じように背筋を伸ばす。
「かぐぁはいひょうほほ、すっひょうおふはへははでごあいまひは!」
煎餅を銜えて喋ったため、「神楽隊長こそ、出張お疲れ様でございました!」という言葉は上手く言えていない。
「何アホやってんだ」
銀時はテーブルの煎餅を一枚掴むと机に向かった。
どっかと椅子に腰を下ろすと煎餅を口に含む。
しかし、それはすぐに吐き出された。
「テメェ、なんつーもん食ってんだ!」
「激辛せんべえ。美味しいでしょ」
○○は煎餅を飲み込むと答えた。
そのまま銀時の前まで歩み寄り、笑顔で右手を差し出した。
「お土産は?」
「んなもんあるか!」
今なお銀時は顔を赤くし、呼吸困難を来たしている。
「ええ! ないの!?」
銀時と神楽、それに新八の三人は、神楽が福引で当てた宇宙旅行から帰った所だった。
神楽は新八を除け者にし、万事屋在住トリオで行こうとしたが、宇宙などまさに夜の渦中。
闇夜が自身に与える影響について解明されていない今、不安を消しきれない○○は断った。
「安心するネ。お土産なら私がちゃんと持って来たアル」
振り返ると、神楽が定春の背中を何やら弄くっていた。
「これネ!」
差し出されたのは宇宙船の大きな舵。
定春の背中に結わえつけ、持ち帰ったらしい。