第2章 【第一訓】天然パーマに悪い奴はいない話
「でもなーんか、ジャンプは読まないと落ち着かないんだよなァ……」
「だから何でジャンプだけ覚えてて、他の記憶は残ってないんでィ」
「それはもう言わない約束!」
目を吊り上げながら、○○は沖田を指さした。
「私だって、もっと別のこと思い出したいよ」
○○には、真選組に拾われた以前の記憶がない。
自分の名前も何もかもを忘れていた。
唯一所持していた写真に記されていた『○○』の名だけが、今と昔の○○を繋いでいる。
それでも初めてジャンプを見た時、食いつくように手に取った。
それは、記憶を失う前から読んでいたからなのだろうか。
「思い出して、早く帰りたいよ」
父や母。
他にも、待っている人がいるかもしれない。
「焦る必要はねェ。そのうち思い出す時が来らァ」
「そんなこと言い続けて、どれだけ経ってると思ってんの」
「グダグダ言っても仕方ねェ。時に任せるしかねーこともあるってんでィ」
沖田は立ち上がり、アイマスクを取ると○○の元に歩み寄った。
「それに、俺は○○にはずっとここにいてもらいてェ」
肩に手をかけ、真剣な表情で○○を見つめる。
「○○がいなかったら、誰が俺らに飯作ってくれるんでィ。○○は真選組の家政婦でィ」
「だ――」
沖田は急いで両耳を塞ぐ。
「誰が家政婦だァァァ!!」
途端、○○の大声が屯所内に木霊した。