• テキストサイズ

~月夜の紅~ 銀魂原作沿い小説

第2章 【第一訓】天然パーマに悪い奴はいない話


 最後の一本を出し終えた時、そのことに気がついた。

「あ、今日、ジャンプの発売日だった。買って来るの忘れた」

 毎週欠かさずに読んでいる、その雑誌。

「あー……でも、これを機に読むの止めようかなァ。女の私が、しかもこの年で少年漫画って……」

 正確な年齢はわからないけど、と付け加えながら、○○は眉間に皺を寄せる。
 その手でマヨネーズをぐにぐにと揉みしだく。

「でもなーんか、ジャンプは読まないと落ち着かないんだよなァ……」
「だからなんでジャンプだけ覚えてて、他の記憶は残ってないんでィ」
「それはもう言わない約束!」

 目を吊り上げながら、○○は沖田を指さした。

「私だって、もっと別のこと思い出したいよ。なんでジャンプに対する情熱だけ覚えてるんだか」

 ○○には、ここに来た以前の記憶がない。
 自分の名前も、何もかも忘れていた。
 唯一所持していた写真に記されていた『○○』の名だけが、今と昔の○○を繋いでいる。
 それでもコンビニでジャンプを見つけた時、食いつくように手に取った。
 それは、記憶を失う前から読んでいたからなのだろうか。

「思い出して、早く帰りたいよ」

 父や母。
 他にも、待っている人がいるかもしれない。

「焦る必要はねェ。そのうち思い出す時が来らァ」
「そんなこと言い続けて、どれだけ経ってると思ってんの」
「グダグダ言っても仕方ねェ。時に任せるしかねーこともあるってんでィ」

 沖田は立ち上がり、アイマスクを取ると○○の元に歩み寄った。

「それに、俺は○○にはずっとここにいてもらいてェ」

 肩に手をかけ、真剣な表情で○○を見つめる。

「総悟?」
「○○がいなかったら、誰が俺等に飯作ってくれるんでィ。○○は真選組の家政婦でィ」
「だ……」

 沖田は急いで両耳を塞いだ。

「誰が家政婦だァァァ!!」

 途端、○○の大声が屯所内に木霊した。
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp