第2章 【第一訓】天然パーマに悪い奴はいない話
大江戸ストアからの帰り道。
騒ぎを聞きつけ、○○は足を向かわせた。
『でにいす 大江戸店』
店を囲むように人々が半円を作っている。
「何かあったんですか」
「ああ、木刀を持った奴が暴れたとか何とか」
「木刀? 廃刀令の御時世に帯刀してるなんて、うちの人達くらいじゃないの?」
○○は人垣の隙間から様子を窺う。
そこではメガネの少年が連行されようとしていた。
「総悟あたりが暴れてるのかと思ったけど、違ったか。まァ、総悟だったら、木刀じゃなくて真剣振り回してるか」
もしくはバズーカか。
そう思いながら、○○は本来の道へと足を戻した。
「ただいま」
誰に言うでもなく言葉を落とし、『特別警察 真選組屯所』という表札のかかった門を潜る。
勝手口から建物へと入る。
「いたんだ。総悟」
ビニール袋をテーブルに置きながら、隣の部屋で横になってテレビを見ている少年に目を向けた。
沖田は寝たまま振り返った。
沖田総悟――屯所の前で行き倒れていた○○を拾った人物。
「……それ、テレビ見えてんの?」
「見えてらァ」
沖田は赤い生地に目が描かれたアイマスクをつけていた。
○○はビニール袋から中身を取り出す。
マヨネーズ。続いてマヨネーズ。次もマヨネーズ。延々マヨネーズ。
最後の一本を出し終えた時、そのことに気がついた。
「あ、今日ジャンプの発売日だった。買い忘れた」
毎週欠かさず読んでいる、その雑誌。
「あー……でも、これを機に読むの止めようかなァ。女の私が、しかもこの年で少年漫画って……」
正確な年齢はわからないけど、と付け加えながら、○○は眉間に皺を寄せる。