第2章 【第一訓】天然パーマに悪い奴はいない話
大江戸ストアからの帰り道。
騒ぎを聞きつけ、○○はその方向へ足を進めた。
『でにいす 大江戸店』
その店を囲むように人々が半円を作っている。
「何かあったんですか」
「ああ、木刀を持った奴が暴れたとか何とか」
「木刀? 廃刀令の御時世に帯刀してるなんて、うちの人達くらいじゃないの?」
○○は人垣の隙間から様子をうかがう。
見えたそこでは、メガネをかけた少年が連行されようとしていた。
「総悟あたりが暴れてるのかと思ったけど、違ったか。まァ、総悟だったら、木刀じゃなくて真剣振り回してるか」
もしくはバズーカか。
そう思いながら、○○は本来の道へと足を戻した。
「ただいま」
誰に言うでもなく言葉を落とし、『特別警察 真選組屯所』という表札のかかった門をくぐる。
そこが、○○の住み家。勝手口を通り、建物へと入る。
「あれ? いたんだ。総悟」
ビニール袋をテーブルに置きながら、隣の部屋で横になってテレビを見ている少年に目を向けた。
「お帰りィ。○○」
沖田は寝たまま振り返った。
沖田総悟――数年前、屯所の前で行き倒れていた○○を拾った当人。
「……それ、テレビ見えてんの?」
「見えてらァ」
沖田は赤い生地に目が描かれたアイマスクをつけていた。
「なんで屯所に残ってるの? 見廻りは?」
「無人の屯所を守るのも、立派な勤めでィ」
「無人じゃないけどね」
表に数人の隊士が構え、警備に当たっている。
言いながら、○○は中身を取り出した。
マヨネーズ。
マヨネーズ。
マヨネーズ。
延々とマヨネーズ。