第60章 【第五十九訓】チンピラ娘とかぶき町四天王の話
黒電話のベル音で目が覚めた。
静かに聞こえて来た声は、お登勢のものだ。
○○は上体を起こした。
自身の着衣を見ると、寝間着ではなく着物だった。
どうしてこんな格好で寝ているのだろうと記憶を蘇らせようとするが、前夜のことが思い出せなかった。
寝起きとはいえ、あまりにも思考が回らない。
立ち上がり、店へと向かう。
「○○さん」
新八の声で、神楽、お登勢、たま、キャサリンが○○に目を向けた。
「今、銀さんから電話がありました。無事だそうです。ピラ子さんも」
「銀さん?」
○○は首を傾げる。
新八は怪訝な表情を浮かべた。
夜通し銀時を捜しに出ていた○○は、疲れて奥で休んでいるとお登勢に聞いた。
それなのに、銀時の無事を聞いてこの反応。
「あ、次郎長一家と」
○○は思い出す。
昨日、椿平子という極道の娘と出会った。
彼女は自分達一家を騙し討ちにした次郎長一家に復讐せんと、かぶき町にやって来た。
銀時の噂を聞きつけた彼女は、力を借りるために万事屋を訪れた。
街に出た一行は、よりにもよって、次郎長の組員とイザコザを起こしてしまった。
騒ぎの只中で黒駒勝男も現れ、万事屋一行は追われることになった。
今、かぶき町は四天王の間で戦争が勃発しつつある危ない状態。
四天王の一人は次郎長。一人はお登勢。迂闊にやり合うことは出来ない。
新八は逃げながら、真っ先に手を出した銀時に声をかけたが返事はない。
逃げる最中、銀時と平子、○○と新八と神楽の二手に分かれてしまった。