第55章 【第五十四訓】会っても互いを知ることは難しい話
「百円のお返しです。ありがとうございましたァ」
○○は忙しくアルバイトに勤しむ。
「三名様、三番テーブルにご案内しまーす」
順番待ちの客もおり、繁盛している。
「ありがとうございましたァ」
○○はテーブルのグラスを片付け、厨房へと下がる。
ふうと一息吐き、肩を回す。
(今頃、新八君デート中かな)
今日は新八が文通相手の子と会う約束をしている日だ。
あの日、近藤を捜しに現れた土方が代筆した手紙によって、相手から「会いたい」と言わせることに成功した。
(新八君っていうか、総悟だけど)
待ち合わせ場所には沖田に行かせるということを銀時から聞いている。
小細工して送った新八の写真。送られた相手は沖田のことを新八だと思うに違いない写真。
会うことになり、辻褄を合わせなければならなくなってしまった。
銀時が立てた作戦を沖田が遂行することになっている。
(総悟、ちゃんとやってくれてるかな)
仕事は不真面目だが、やる時はきっちりとやってくれる。
それはわかっているが、如何せん、あの男は一筋縄ではいかない。
「レジお願いしまーす」
「はーい! 私、行きまーす!」
○○は思考を切り替え、レジへと向かった。
今日は猫の手も借りたい程の忙しさだ。