第54章 【第五十三訓】文字だけで互いを知ることは難しい話
飛脚は手紙を携えていた。
新八は文机の前で手紙を広げ読んでいる。
新八の左側から近藤、右側からは銀時が手紙を覗き込む。
○○は銀時の右から首を伸ばして文面に目を向ける。
手紙を見て新八は落胆している。
書かれているのは、文通相手の姉の話ばかりだった。
「前回、どんな手紙を送ったの?」
手紙の出だしは「新八さんにもお姉さんがいるんですね」というもの。
「姉は気高く美しく神が作り賜うた人類最上の女性であり――」
「書いてません。そんなことは書いてません」
近藤の言葉を新八は遮る。
「当たり障りのないことだけですよ」
「だから言ったんだよ。姉ちゃんの話題は省けってよォ」
銀時は姉のことなど書かなくていいと助言したが、姉は欠かせない存在だからと全消去はしなかった。
「文通相手の子……うららちゃんだっけ? お姉さんのこと大好きなんだね」
文面からは姉のことを見ている様子が見て取れる。
「シスコン同士でいいんでないの」
「言葉にトゲを感じるんですけど気のせいですか」
返事をどうするかと、新八、銀時、近藤は頭を悩ませる。
「もっとお姉さんのことを書けばいいんじゃないの」
「姉は気高く美しく神が作り賜うた人類最上の女性であり――」
「そうじゃなくて。向こうのお姉さんのこと」
だが、○○と男性陣では根本的に目的が異なっている。
「姉ちゃんの話から切り離したいんだよ」
銀時は文通相手、うららの話を引き出したい。
ただの文通相手から、直接会うことにこぎつけ、恋愛関係にまで発展させようとするのが目的だ。
姉なんてぶっちゃけどうでもいい。
「そんな簡単に行くかなァ」
「だから考えてんだろ」
「近藤さん、いい加減にしてくれよ」
ロクな案も浮かばない中、土方が顔を見せた。