• テキストサイズ

~月夜の紅~ 銀魂原作沿い小説

第50章 【第四十九訓】盗撮した亀を捕まえて竜宮城に行ってみた 其ノ三


「仕方ねェ。こいつを料亭にでも売り飛ばすか」

 銀時はボートを漕いでいた亀に目を向ける。

「勘弁して下さい。俺、ただのオッさんですから。俺なんて鍋に沈めても、不味い出汁しか出ませんから。いてててて! 髪剥がないで!」

 神楽に髪を引っ張られ、亀梨は目に涙を浮かべている。

「それに嫁さんもうすぐ出産なんすよ。一家の大黒柱を失ったら、嫁も子どもも大海原を彷徨っちゃいますよ」
「路頭を彷徨うってこと?」

 ○○は亀梨のグラサンを取り、鍋に沈める準備を始める。

「ホント勘弁して下さいって」
「じゃあ、金出せや」

 亀梨は溜め息を吐く。

「わかりましたよ。電車賃だけですよ。一人分だけ」
「全員分だよ」

 四人の蹴りが亀梨を襲う。
 同時に、上空が影に覆われた。

「電車賃などいらぬ! ○○殿! 俺と共に天竺に参ろうぞ!!」

 スポーンと、桂が乗っている生物が顔を出す。
 竜宮城に流される前に乗っていたスッポンに、桂は再び搭乗していた。

「きび団子をいただいた礼は果たさねばならんのでな! 再び天竺を目指す所存だ!!」

 ○○は白けた顔でスッポンを見上げる。

「○○殿! 此の者のきび団子は美味いぞ! ○○殿も一ついただくといい! そして、俺と共に天竺へ――」

 言い終わらないうちに、スッポンは速度を上げた。

「アレ? ちょっと? 待って。○○殿も乗せてってよ。ねェってば! ○○殿! ○○殿ォォォ!!」

 断末魔の叫びのような声を残し、桂の姿はスッポンと共に空の彼方へと消えて行った。

「アイツ……どこに行くんだろ」

 竜宮城はその姿全てを海の底へと消していた。
 煙も晴れ、上空に広がるのは平凡な夏の空。
 ひと夏の冒険は、穏やかな波の上にて終わりを告げた。
/ 502ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp