第7章 【第六訓】人生ってオッさんになってからの方が長い話
「はーなーせー!」
「ぶほっ!」
顔面を拳で強打され、銀時の鼻からまたしても血がしたたり落ちる。
「テんメ! 人んちに不法滞在した挙句、家主に暴行か!? 警察に突き出すぞ、コノヤロー!」
「やれるもんならやってみろ! 未成年かどわかして不当に働かせてる上、慰み者にしてるって訴えてやる!!」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねェ! 人をロリコン扱いすんな! 誰がかどわかして不当に働かせた!……アレ? 給料払ってねーや」
他はともかく、不当雇用は当てはまる。
「はーなーせー!」
「いだだだだ! 引っ張るな! 引っこ抜くな!」
思いきり髪の毛を引っ張られ、銀時は涙目になっている。
○○は外へと放り投げられ、すぐに鍵がかけられた。
「開けろー! 白髪野郎!!」
声を上げると、あっさりと扉が開かれた。開いた途端に顔面に打撃を食らう。
顔を襲ったのは、○○が置いて来た手提げだった。
またすぐに鍵がかけられる。
「よくも女の顔に……」
○○は立ち上がると、チャイムを連打する。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン。
「開けろ! 開けろ! 開けろー!」
さらにはガンガンガンガンと扉が叩かれる。
無視して銀時はリビングに戻った。
ティッシュを取り出し、両方の鼻に詰める。
溜め息が漏れる。
「本当に○○か、アイツ」
銀時はひっくり返したソファを元に戻しながら、以前の○○を思い出す。
○○はなおも騒ぎ続けている。
「開けろー! 開けろ、開けろー!!」
ピンポンピンポンガンガンガンガン。
○○は何度も何度もチャイムを鳴らし、扉を叩いては声を上げた。
しかし、
「うるっさいよ! アンタ!」
「は、はい! すいません!」
下階から怒鳴り声が聞こえ、その威圧的な声に○○は縮こまる。
「記憶失くしたからって、あんなに性格が変わるもんか?」
静かになった玄関に目を向け、銀時はまた溜め息を吐いた。