第45章 【第四十四訓】真選組動乱篇 其ノ一
新八はソファに座り直し、土方も着座した。
その体は○○の視線を避けるように入り口の方へと少し傾いている。
「つーかあの……土方さん」
仕事はどうしたのかという新八の問いに、土方はクビになったと告げた。
「真選組やめたの!?」
荒げる新八の声に埋もれながら、○○の額から再びブチッという血管の切れる音が鳴る。
「何言ってんだ! 謹慎中とは聞いたけど、クビなんて話は聞いてねェ! 何勝手に辞めてんの!!」
○○は机にバンと手をついて立ち上がった。
○○の剣幕に再度土方は怯えた表情を見せる。
新八は○○を落ち着かせる。
○○が話に割り込んで来ては話が先に進まない。
――人間関係が嫌になった。
――働かないで生きていける手段を探している。
土方の口から紡がれる言葉に○○の血管はブチブチと引き千切られかける。
立ち上がって声を上げたくなるが「落ち着いて。抑えて」と新八が目で訴えながら手のひらを向けているため堪えている。
これは本当に土方なのか。土方十四郎なのか。土方十四郎じゃないと言ってくれ。
○○が投げ槍にそんなことを思いつつある中、どうしても手放せないと言いながら土方は刀を示した。
「店の人が妖刀とかいってた」
○○の目、銀時の目、新八の目、神楽の目がその刀に釘付けになる。