第44章 【第四十三訓】集え、バベルの勇者達!!の話
「九兵衛さんの方が銀さんよりよっぽど男前ですよ。姉上への気持ちに踏ん切りがついたら、○○さんに目が向かないこともないんじゃないですかね」
九兵衛が妙から○○に乗り換えるなどありえないことはわかっているが、無事に作戦を遂行するには嘘も方便。
「二人がくっついたりしたら女にするどころじゃないですよ」
折悪しくこれから合コンだ。
九兵衛を男に惚れされるどころか、○○との仲を進展させる恐れがある。だが、銀時は冷静だ。
「○○に限ってそんなことあるわけねーだろ」
九兵衛を女にしようと企てているその最中に、○○が作戦を破綻させるようなことをするはずがないと高を括っている。
「神楽、お前だけが頼りだ」
銀時は家康像の台座に上がっている神楽を見上げた。
○○があの調子では、合コンで女子達の中に潜り込んで密偵の役割を果たせるのは神楽しかいない。
俺達の評価を上げろと、銀時は神楽に仕込んでいる。
○○は神楽が立っている側と反対の台座に凭れ、眉間に皺を寄せてプツプツと何か言い募っている。
「○○さん、いざとなったら、僕が九兵衛さんを口説きますから」
新八は溜め息を吐く。
「新八君が?」
○○は眉間に皺を寄せたまま新八に目を向けた。
「新八君が九兵衛さんを口説くの?」
「はい」
「女の子と付き合ったこともなくて、モテたこともないダメガネの新八君が九兵衛さんを口説き落とせるっていうの?」
その言われ様に新八は頬を引きつらせる。
確かに口説き落とす自信はないが、○○のためを思って言っているというのに。
銀時に対する憂さ晴らしも含まれているのだろうが、こんな風に貶されては腹立たしい。
「だから言ってんだろ。俺が口説くしかねーんだって」
銀時は○○の頭に手を乗せ、グリグリと捏ね繰り回す。
「触んないでよ」
○○は銀時の手を振り払う。銀時は再度○○の頭に手を乗せては払われる。堂々巡りの繰り返し。
「お前らなんなんだよ」
喧嘩というよりイチャついているようにしか新八の目には映らない。
首をつっこんだ自分がバカだったと新八は後悔する。