第44章 【第四十三訓】集え、バベルの勇者達!!の話
「合コン?」
「ええ。銀さんがやろうって」
志村家の和室で、新八は妙と向き合って座っている。
「お妙さんと九兵衛さんにも、是非参加してほしくて」
新八の隣に座る○○は、目の前の九兵衛を見つめる。
女として生まれながら、男として育てられた悲運な少女。
今日も九兵衛は男物の着物に身を包んでいる。
○○はその顔に数ヶ月前の彼女を重ねる。
花を象った可愛らしい眼帯。ツインテールの髪型。
『スナックすまいる』で夏風邪が蔓延した折、九兵衛をキャバ嬢として働かせるために、○○と妙が仕立て上げた姿だ。
その可愛らしさに、○○と妙はキャイキャイと沸き立った。
「嫌だわ、○○さん。いくら銀さんに愛想を尽かしたからって、合コンで新しい男を見つけようなんて」
その言葉で、○○は九兵衛から妙に視線を動かす。
「合コンなんてやらなくても、○○さんならきっと素敵な男性と出会えますよ」
妙は○○に笑顔を向ける。
「いや、銀さんがこの合コンの主催だってば」
「あら、そうだったわね。じゃあ、○○さんが銀さんに捨てられたのね」
こっそりと妙は九兵衛に耳打ちする。
「あの、お妙さん、聞こえてますよ」
しかし、その声はしっかりと○○にも届いている。
「何? 銀時と○○殿はそんな間柄だったのか」
今の今まで、九兵衛は銀時と○○の関係を知らずにいた。
九兵衛の瞳が真っ直ぐに○○に向けられる。
「奴は何を考えているのだ。○○殿は僕の目から見ても魅力的な女性だというのに」
「何を言っているんですか、九兵衛さん」
男にも女にも、魅力的などとストレートに言われたことなどない。
純粋で純朴な九兵衛の発する言葉に○○は頬を染める。
「何頬染めてんですか、○○さん。○○さんが九兵衛さんにときめいてどうするんですか。作戦が破綻しますよ」
「ときめいてないよ!」
新八の言葉を○○はあたふたと否定する。