第43章 【第四十二訓】沖田姉弟と気にくわねェ野郎の話 其ノ二
「まァ。じゃあ、屯所にいらしたのは真選組に助けられて?」
ベッドの上で上半身を起こすミツバの横で、○○は椅子に座って煎餅を齧る。
先日倒れてしまったミツバは大江戸病院に入院することになった。
肺を患っていると沖田が言っていたが、その病状は想像以上に悪いらしい。
彼女からの依頼を受け、○○と銀時は病院へとやって来た。
「身寄りがなかったので、近藤さんがとても同情してくれて」
近藤さんらしいと、ミツバは穏やかな笑みを見せる。
彼女からの依頼は『激辛せんべい』を差し入れてほしいというものだった。
ミツバに勧められ、○○も一枚頂いている。
「近藤さんは気にしなくていいって言ってくれたんですけど、ただ置いてもらっているのは嫌だったので隊士として……いえ、隊士のみなさんの世話をするということで置かせてもらうことになったんです」
○○が女中として屯所にいたと沖田が説明したが、その経緯については話していなかった。
記憶がないことは話していないが、怪我をして倒れていた所を助けられ、それが縁で真選組に身を置いていたと伝える。
「でも、住み込みとなると危険でしょう?」
いつ何時攘夷浪士の襲撃を受けるかもわからない。
「隊士のみなさん、反対しなかったんですか?」
「されましたよ。もちろん」
○○は真選組に拾われた当時を思い出す。
初めから○○を居候させることに同意する隊士など皆無に等しかった。
だが、一人、また一人と○○の意思に屈して何も言わなくなった。
さらには道場で手合わせをするうちに○○の剣術能力の高さを知り、これならば自分らと遜色ないのではないかと○○を認める隊士も現れ出した。
だからといって、全員の同意が得られたわけではない。