第40章 【第三十九訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ四
「新八君、近藤さんは?」
全力疾走しながら、○○は新八に尋ねた。
決戦前、新八は自分が護ると近藤は息巻いていた。
それなのに、姿がないのはどういうことだ。
既に敵の手に落ちたということか。
「それが、近藤さんとははぐれちゃって……」
新八は眉間に皺を寄せた。
「銀さんはどうしたんですか?」
同じ疑問を新八は○○に抱いていた。
銀時が○○を一人にするとは思えない。
だが、銀時が既にやられているとも思えない。
「まァ、こっちも、はぐれたっていうか、そんなカンジ」
決戦が始まってから一度も敵と手合わせすることなく、長時間に渡って厠から出て来ないなどという沽券に関わることは伏せておく。
「○○さんを護りながら戦うことが難しかったってことですか? あの銀さんでも……。やっぱり、天下の柳生は手強いですね」
新八は勘違いして勝手に納得している。
続いて出た言葉に、○○は驚きを隠せなかった。
「沖田さんがやられました」
「え、総悟が!?」
新八と近藤が彼を発見した時、皿を割られるだけに留まらず、彼は右足の脛を骨折している状態だった。
「総悟が……」
沖田は真選組随一の剣の使い手。俄かには信じがたい。
新八は神妙な表情を浮かべる。もしかしたら沖田は神楽にやられたのかもしれない、という疑惑を新八は黙っていた。