第39章 【第三十八訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ三
「○○さん!」
皿の破片に目を向けていた○○は、名前を呼ばれて顔を上げた。
先程、○○が走って来た道を、新八と土方が走って来る。
「新八君! トシ!」
新八は決戦が開始される前と変わらぬ様子だが、土方は血まみれだ。
「トシ! どうしたの、そのお皿!」
「皿かよ!」
土方は巨大な皿を腹に巻きつけていた。
「○○さん! 九兵衛さんが来てます!」
二人の少し後ろから、その姿が追って来ているのが目に入った。次第に距離が詰まっている。
○○も二人と並走して九兵衛から逃げるように走り出す。
「土方さん、大丈夫ですか!?」
手負いの土方は、新八と○○から遅れ始めた。
「こいつァ、逃げきれるもんじゃねーな」
追いつかれれば、土方と新八、共倒れになる危険がある。
土方の皿が割られてもまだ勝負はつかないが、新八がやられればそこで敗北が決まってしまう。
「いけ」
土方は自らがおとりとなることを選んだ。
「土方さん!」
「トシ!」
姉貴に会えと、新八に告げる。
「○○。そいつの皿、割らせんじゃねーぞ」
○○にも送り出す言葉をかける。
「……うん」
「マヨネーズ、おごります」
○○と新八は土方を残し、先へと走った。