第39章 【第三十八訓】天堂無心流VS柳生陳陰流 其ノ三
「ここに皿がある」
九兵衛は勝負を受けた。
ルールは柳生流に則って行われることになった。
各々、体のどこかに皿をつけ、割られた者は即離脱。
大将の皿が割られた場合はその場で決着。割られた側の負けとなる。
柳生が得意とする道場剣法ではなく、多勢対一人も可能な喧嘩勝負。
ルールを決める権利があるにしては、最善の選択とは言えない。
「君達の誇るその実戦剣法とやらを完膚なきまで叩き潰して、全ての未練を完全に断ち切ってやる」
相手の得意とする方法で勝ち、二度とこのような気を起こさせないつもりだ。
「腹立つんですけどォ!!」
九兵衛の態度に腹を立てている近藤は、木に蹴りを入れている。
「九兵衛さん、案外いい人かもしれませんよ」
皿のつけられた布を、○○は顔の前でグルグルと回す。
近藤が蹴りをくれている木の後ろで、○○は手すりに凭れていた。
その横では神楽が手すりに座っている。
一人や二人、多い所で勝負に影響はないと東城は言っていた。
一人や二人、増えても支障のない戦闘方法でなければ困るのはこちらだ。
「一対一の勝負にされたら私の出る幕ないですよ」
「なんの話ですか、○○さん」
「こっちの話」
新八のツッコミを受け流す○○は、皿を頭上に持ち上げた。どこに装着するか考え中。
「やっぱりここ?」
組まれた神楽の膝の上に○○は皿を乗せる。膝蓋骨だけに。
「ベタアルな」
「そんな固い部分、皿割られると同時に膝の皿まで割られたら相当の大怪我になりますよ」
○○と神楽は新八に白い目を向ける。
「シャレ言ったわけじゃないから!」
元はと言えば○○さんが! と続けようとした新八の言葉は、目の前で屈んでいた男の声で遮られた。